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熱戦を彩ったヒーローたち 夏の甲子園予選 その2

熱戦を彩ったヒーローたち 夏の甲子園予選 その2

第100回全国高校野球選手権記念大分大会

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熱戦が繰り広げられた夏の甲子園の県予選で

強烈なインパクトを放った選手たちを紹介する。

 

最高のキャプテン、最高のリードオフマン

 

管大和(明豊高校3年)

173cm、66kg、東雲中学校出身

 

 勝って当たり前―。そんな周囲の期待を背負うキャプテンとして、リードオフマンとして、チームを引っ張ってきた管大和のプレッシャーは相当なものだったはずだ。

 昨夏の甲子園でベスト4を賭けた試合に敗れたその日に、新チームのキャプテンに任命された。「自分は声で引っ張るタイプではないのでプレーで引っ張りたい」と、チームの勝利を目指し、実現するために努力をし、先頭に立って戦うキャプテンを目指した。

 「甲子園で勝つことが目標」と公言してきたこともあり、選手の意識は高まり、チーム全体のレベルは高まった。県内では敵なしと言えるほど力をつけ、春の九州地区大会では準優勝するなど結果も出た。夏の甲子園に向け死角はなかったのだが…。

 準決勝で好投手2人を擁する柳ケ浦を捉えきれず、昨年王者の連覇の夢が絶たれた。敗因はひとつではないが、管の負傷は小さくなかった。3回戦で走塁中に送球が当たり口の中を9針縫い、準々決勝は欠場した。準決勝では1番中堅として名を連ねたが、本調子ではなかったのは明らかだった。頰が腫れ上がり、まともに食事ができずに体重は落ちていた。この試合は今大会唯一の無安打に終わったことがそれを物語っている。それでも広い守備範囲で長打の当たりを捕球しピンチを最小限に抑えた。

 試合後、目を真っ赤に腫らしながらもキャプテンとして最後の仕事として取材陣のインタビューに応じ、「みんなを甲子園に連れて行けなかった。申し訳ない」と涙を流した。

 

 

フォア・ザ・チームを体現したリーダー

 

熊懐郁祐(藤蔭高校3年)

173cm、75kg、田主丸中学校(福岡)出身

 

 明豊の管大和がプレーでチームを引っ張るキャプテンなら、優勝した藤蔭の熊懐郁祐はメンタルリーダーである。原秀登監督は「私が思っていることを口にしてくれる。時には言いにくいこともあっただろうけど、チームのために自分を犠牲にできるリーダー」と絶大な信頼を寄せる。

 野球が誰よりも好きで、グラウンドでは一番大きな声を出す。チームを引っ張り、仲間を盛り上げ、一番真面目に練習し、誰よりも努力する。時には嫌われ役も買って出た。練習後の自主練習を早めに切り上げるチームメートに、「お前の限界はこんなもんか。まだまだやれるやろ」と厳しい口調で言い放った。「アイツがバットを振っていたから僕も負けずに振った」と橋本和真(3年)が話すように、チームに与えた影響は大きかった。

 今大会は出場機会がなく3塁ランナーコーチが定位置となったが、相手の守備位置を的確に判断し、情報を走者に伝えた。守備時にはベンチの最前列に位置し、身振り手振りで仲間を応援した。試合後は声がかすれ、聞き取れないことは茶飯事。

 自分のこと以上にチームのことを考えるキャプテンは、優勝が決まった瞬間は大粒の涙を流し、チームメートと抱き合った。仲間から祝福の胴上げをされ、さらに泣いた。「今大会は試合に出られなかったが、甲子園ではプレーでチームの勝利に貢献したい」と強い覚悟と与えられた仕事に責任を持って、さらなるレベルアップを続ける。その姿勢がチームに好循環をもたらす。

 

 

(柚野真也)