
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
吉田劇場が開演―。大分トリニータの吉田真那斗は、33節の藤枝MYFC戦で自身のプロ初ゴールで、チームに7試合ぶりの勝利をもたらした。勝利を決定づける2点目だった。後半40分、カウンターを仕掛ける相手のパスを出足鋭くインターセプトし、そこから鮮やかにゴールを奪った。
この一連の流れによどみはなかった。「(パスカットした場面は)賭けだった」(吉田)が右足を懸命に伸ばし、ボールを奪うと倒れ込みながらこぼれ球を宇津元伸弥に預ける。すぐに起き上がり、大外を駆け抜け、リターンパスを受けるとダイレクトでシュートを放った。一度はGKに弾かれるが、こぼれ球を自ら押し込みネットを揺らす。「僕の劇場でしたね」とパスカットからゴールまで自作自演。得点後はゴール裏のサポーターの前に一目散に駆け寄り、「勝てない時期が続き、悔しい思いをさせてきたので勝利を届けたかった」と一緒に喜んだ。
プロ初ゴールを決めた吉田真那斗
6月末に育成型期限付き移籍で横浜F・マリノスから大分に加わった吉田。アップダウンを繰り返す豊富な運動量とボールを前に運ぶ推進力がハマった。大分に来て4日後の22節・ヴァンフォーレ甲府戦に、いきなりスタメンで起用されたことからも片野坂知宏監督の期待の大きさがうかがえた。その後も試合に出続け、「チームの勝利はもちろんだが、個人としては結果が分かりやすいアシストや得点がほしい」と貪欲にゴールを狙った。結果を手にするまで時間はかかったが、「やっと点が取れた。これで大分の一員になれた」と胸をなで下ろした。
ただ、チームは残留争いの渦中にいる。調子の上がらないチームに責任を感じていた。「悪い流れを変えるために大分に来たのに不甲斐ない」と苦しい胸の内を明かしたこともあった。ゴール裏の叱咤(しった)激励に涙を流すこともあった。喜怒哀楽を隠さないむき出しのプレーは、見る者にも伝わってくる。「大分は残留争いをするようなチームではない。ここから抜け出し、少しでも順位を上げたい」。熱い男のドラマは、始まったばかりだ。 試合後に喜びを爆発させた (柚野真也)
試合後に喜びを爆発させた
地区を選択
学校名を選択