
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
春、夏の甲子園のマウンドに立った寺本悠真(2年)は、明豊の新エースとして期待されている。新チームになって最初の公式戦となった県高校野球選手権では、決勝の先発マウンドを託されたが、優勝を決めた瞬間はベンチだった。寺本は「チームとして勝てたことはうれしいが、9回を投げきれなかった。終盤に球が抜け、思うような投球ができなかった」と唇をかんだ。
身長166cm、体重58kgの小柄な左腕は、打者の内角を突く制球力と度胸が光る。ピンチを切り抜けるたびに雄叫びをあげる投手は少なくないが、寺本は「ポーカーフェイス」。眉一つ動かさず、抑えて当然といった表情でマウンドを降りる。静かに闘志を燃やすタイプであることは川崎絢平監督も知っているが、県選手権でエース番号「1」を与えなかったのは、「自分の力でチームを勝たせる気持ちが見えなかった」と説明する。
県選手権では背番号10で投げた
県選手権決勝は抜群の制球力に加え、緩急と落差のあるカーブで2桁の三振を記録。「調子はよかった」(寺本)と危なげないピッチングを見せたが、終盤の8回、9回で相手打線に捕まった。川崎監督は「寺本は打たせて取るタイプの投手。3、4巡目で相手打者の目が慣れてくるので本来は9回まで投げさせることはないが(エースとしての)覚悟を見たかった」と話す。結果、9回途中、自責点3でマウンドを降りることになったが、「悪くはなかった」と川崎監督は及第点をつけた。
ただ、寺本は満足する様子はない。「力不足」と悔しがったのはエースとしての自覚が芽生えたからこそ。カーブ、スライダー、チェンジアップの得意の変化球から「三振が取れる決め球をつくらなければいけない」とワンランク上の投球を見据える。川崎監督は「バッティングでもチームの勝利に貢献できるエース」を求めており、寺本は苦手なバッティングでも決勝では2安打2打点と結果を残した。
九州地区大会県予選が14日に始まる。以前は、エースと呼ばれると、こそばゆいものがあった寺本だが、「その時には(背番号)1をつけたい」と強い思いを示した。理想とするエース像「監督にもチームメイトにも信頼されるピッチャー」に近づきつつある。
ピンチの場面でも顔色一つ変えない
(柚野真也)
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