
珠玉の一枚 Vol.40 【大分県】
剣道
業師の本領発揮。延長戦が始まって40秒が過ぎた頃、面を狙い飛び込んできた相手に応じるように、山下剣希(明豊3年)が返し胴を打ち込み、審判の白の旗が3本上がった。「無心だった。体が勝手に動いた」というその瞬間、全国高校総体の剣道男子個人戦の優勝が決まった。県勢45年ぶりの日本一であった。岩本貴光監督は「大技も小技も使える山下らしい剣道ができた」とたたえた。
優勝の余韻に浸る間もなく、10分後には団体戦決勝に次鋒として出場。個人戦の快進撃と異なり団体戦は苦戦した。決勝トーナメント1回戦で一本負けを喫し、準々決勝、準決勝は引き分け。「剣道は個人競技といわれるが、チームのために戦える団体戦が好き」と常々言っていた山下は、個人より団体で優勝することを強く望んでいた。団体戦決勝では先勝されていただけに、「絶対に自分がポイントをとって次につなげたかった」(山下)が、引き分けに終わる。後続も盛り返すことができず準優勝に終わった。
技数の多さに定評のある山下剣希
この日は個人戦3試合、団体戦4試合をこなした。1試合4分で終わる団体戦と、4分を戦った後も決着がつくまで延長戦が継続する個人戦では、ペース配分も戦略も異なる。岩本監督は「ここぞという場面でポイントを確実に取ってくれた山下であっても、団体戦と個人戦を交互に戦うのは難しかったと思う」と明かす。これまでチームをけん引してきた山下は、団体戦で優勝できなかった悔しさをあらわにした。「明豊の名を背負って試合ができる最後の大会だった。団体で勝てなかったことが悔しい」と涙を流した。
表彰式でようやく笑顔が戻ったが、個人で日本一に輝いたことよりも、団体で日本一を逃したことが脳裏から離れない。国スポには県代表として、今大会の団体戦を戦った明豊単独チームで臨む。「負けた悔しさを晴らしたい。県代表として戦うが、明豊らしい剣道をしたい」とリベンジを誓い、大学では「団体で日本一を目指したい」という。個人競技でありながら、「みんなで一つ」という意識は強い。これこそ明豊に入学して、3年間培った精神なのだ。
個人戦で日本一、団体戦は準優勝となった
(柚野真也)
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