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大分工業高校 首藤俊輝 もう一度オレンジコートに立ちたかった

大分工業高校 首藤俊輝 もう一度オレンジコートに立ちたかった

 高校3年間、部活動に励み、精一杯の努力を続けた3年生。それぞれの競技で高校最後の晴れ舞台を目指し、県予選を戦った。一つひとつのプレーに歓声がわき、ゲームセットでは悲鳴のような声が響く。ここでは敗者が多数だ。全国大会への切符を手にするまでの道は険しい。負けて涙を流す者、全てを出し切り笑顔を見せる者。そんな3年生の姿を追った。

 

大分工業高校バレーボール部

首藤俊輝

ポジション:ウイングスパイカー

学年:3年

身長:175cm

最高到達点:305cm

出身中学校:原川中学校

 

 高校1年生の時に憧れの春高バレー(全日本バレーボール高等学校選手権)のオレンジコートに立った。レシーブを評価され、1年生でただ一人試合に出た首藤俊輝は「あの大会は先輩に連れていってもらった。自分のことに集中することだけを考え、伸び伸びプレーできた」と当時を振り返る。身体能力に優れたアタッカー陣が揃ったチームの中で、1年生ながら最も安定感のあった首藤を江崎裕之監督は、「このチームの影のMVP」と称し、絶大の信頼を寄せた。2年時にはセッターにコンバートし、試合の流れを読み、的確な判断でプレーすることを学ばせた。

 

 その後もチーム事情によりポジションが変わり、それぞれの視点で試合を経験したことでプレーの幅が広がった。「味方の気持ちが分かるようになったが、それ以上にどんなプレーをすれば相手が嫌がるかが分かるようになった」。最終学年となりキャプテンを任され、チームの中心選手となった。「もう一度オレンジコートに」と2年ぶりの春高バレー出場に向けて挑んだ春高バレー県代表決定戦。経験の少ない下級生に声を掛けリラックスさせ、試合中には相手の隙を伝え、主導権を握れるように試合をつくった。

 

キャプテンとしてチームを引っ張った

 準決勝では1、2年生が主体の大分南高校相手に苦戦したが、第2セットのマッチポイントが続いた勝負どころで“3年生の意地”を見せつけた。「チームの流れを変えるのは自分自身」と得意のレシーブで攻撃にリズムを生み、チームを勝利に導いた。

 

 決勝では、「首藤が黒子になればチームが勝つ」(江崎監督)と2年前の再現を描いたが、別府鶴見丘の多彩な攻撃にサーブレシーブが乱れた。相手のエースにサービスエースを決められるなど守備が崩れた。焦りから攻撃の呼吸が乱れることも多かった。それを救ったのが首藤だった。2セット先取され、後がなくなった第3セットの立ち上がりから、サーブ、スパイク、ブロックを次々に決めた。

 

 だが、それはチームが描くゲームプランではなかった。セットポイントを2−1とした第4セットは、「緊張から焦りがあった。僕たちには財産がなかった」と首藤。全国大会を経験していない選手が過半をしめるチームは、決勝独自の雰囲気に押しつぶされた。「それを救うのが僕の仕事だったのだが…」と孤軍奮闘したがチーム力の差は歴然だった。試合後、首藤は「この2年間は悔しさしかない。勝ちたかった」と力なく語り、高校3年間のバレーボール競技に別れを告げた。

 

サーブ、スパイク、ブロックを次々に決めた

 

(柚野真也)