OITA SPORTS

7/1 TUE 2025

supported by

田中工藝

その他

大分トリニータ 天皇杯準優勝でシーズン終了、チームは確かな変貌の兆しを見せた

大分トリニータ 天皇杯準優勝でシーズン終了、チームは確かな変貌の兆しを見せた

 第101回天皇杯全日本選手権は国立競技場で決勝があり、大分トリニータは試合終了間際に浦和に勝ち越され、1-2で敗戦。クラブ二つ目のタイトルに手は届かなかったが、準優勝で今シーズンの全ての試合を終了した。

 

 1点を追う展開が続いた終盤、F Kの場面で下田北斗と高木駿が並ぶ。「(相手ゴールから)遠いのでパスを出すよ」と高木が相手の意表を突く変速F Kを敢行する。相手の虚を突くサインプレーでプレーが始まると下田がゴール近くまでボールを運ぶ。相手G Kが飛び出せない絶妙な位置にクロスを送り、ペレイラが頭で合わせてゴールネットを揺らした。試合終了間際の同点ゴールに、誰もが準決勝での劇的勝利を思い浮かべたが、現実のものとはならなかった。アディショナルタイムの3分に、今度は浦和にF Kの流れから決勝点を奪われた。

 

 今季限りで退任する片野坂知宏監督は、「悔しい敗戦となった。同点の状況を続け、チャンスを仕留めたい思いがあったが、早い時間帯に失点したことが悔やまれる」と振り返った。辛抱強い守りでしのぐシナリオは出鼻でくじかれた。タイトルの懸かった一戦、押し寄せる緊張が選手の動きを鈍らせたことは確かだった。相手のスピード、球際の強さで劣勢になる場面が多く、開始6分で失点。それでも後半は、「修正ができ、相手陣内でボールを動かすことができた」と片野坂監督。G Kを組み込んだ最終ラインからボールを動かし、相手のほころびを見つけ、決定機をつくる。片野坂監督が6年間で積み上げた攻撃の形は随所に見ることができた。

 

天皇杯準優勝で今季の全日程を終了した大分トリニータ

 

 この試合で大分の今季の全日程が終了した。リーグ戦では2試合を残してJ2降格の憂き目に遭い、悔しい思いをした。しかし、降格した直後の練習で、片野坂監督が「J2に降格したことは残念だし、悔しい。でも、リーグの2試合と天皇杯の『2試合』で、自分たちが積み上げた大分のサッカーが通用することを証明しよう」と選手に呼び掛けた。タイトルに手は届かなかったが成長を証明することはできた。これまでの経験の中で手にした財産は大きい。チームを去る片野坂監督が気持ちを整理するように息をため、ゆっくり言葉を紡いだ。

 

 「決勝の舞台に立ち、素晴らしい相手と対戦できた。新しい大分の歴史を刻むことができたのかなと思う。しかし、今日の試合でもそうだし、この1年間J1で戦ってきた中で足りなかったのはプレーの強度やクオリティー、戦う姿勢などサッカーのベーシックな部分だと思った。結局、そういう部分は日頃の練習から自分に矢印を向けて取り組めるかどうか。今日の悔しさを忘れずに来年1年で復帰して、J1に戻ってきてほしい」。片野坂監督が残した言葉は、今後への可能性と期待を抱かせるに足りるものだったように思える。

 

写真は全て大分フットボールクラブの提供

 

試合後に選手にラストメッセージを送った片野坂知宏監督

 

 

(柚野真也)