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ラストバトル〜3年生、最後の戦い〜 ラグビー 両校優勝、大会3連覇を成し遂げた大分東明

ラストバトル〜3年生、最後の戦い〜 ラグビー 両校優勝、大会3連覇を成し遂げた大分東明

第101回全国高校ラグビーフットボール大会大分県予選

11月7日 大分市市営陸上競技場

決勝

大分東明14-14大分舞鶴

※抽選にて大分舞鶴が代表権獲得

 

 3年前、大分舞鶴の34連覇を阻止し、花園初出場を果たした大分東明。歴史的瞬間に響いた歓喜の声は、いまだに脳裏に焼き付いている。そこから大分の高校ラグビー界はがぜん面白くなった。1強から舞鶴と東明の2強時代へ。公式戦の決勝では常に2校が対戦し、県予選とは思えない熱戦が繰り広げられた。

 

 「これまで2年連続花園に出場しているが、それはあくまで先輩の成果。自分たちの代のラグビーで花園に出場する」。そう誓いピッチに立った東明フィフティーン。

 試合は舞鶴の猛攻を防ぐ “我慢の時間”が続いたが見事な集中力でしのぎ切った。前半22分、後半15分にトライを許し、14-0と引き離された後も冷静に対処し、チャンスを待った。

 じわりじわりとフォワード戦に持ち込む舞鶴に対して、東明には一発で仕留める力がある。後半18分に驚異の突破力を見せたナンバー8のダウナカマカマ・カイサ(2年)のキックをウイングのナブラギ・エロニ(同)が受け、そのままトライを決める。そのわずか2分後にはセンターの日隈太陽(3年)がゴール中央にトライ。コンバージョンキックも2本とも決まり、一気に同点に追い付いた。

 

同点につながるトライを決めた日隈太陽

 

 攻守ともに大きな成長を見せた東明。その後も自陣ゴール前で舞鶴の猛攻を防ぎつつ巻き返しのチャンスを狙ったが、追加点を奪えずノーサイド。史上初の「同点両校優勝、代表権は抽選で決定」という事態に会場がざわめいた。

 抽選に臨むキャプテンの馬越涼(3年)が抽選室に入った後、祈るように手を合わせ、天を仰いだ東明ラグビー部員たち。馬越に全てを託し、見守るしかないもどかしさ、勝ち切れなかった悔しさ、花園出場への渇望…。複雑で一途な、痛いほどの思いが伝わってきた。抽選が終わり、最初に出てきたのは舞鶴のキャプテン島正輝(同)。無言、無表情、結果は見えない。次に姿を見せた馬越は、仲間の顔を見た瞬間に泣き崩れた。それで全てを悟ったのだろう。部員たちは一斉に馬越に駆け寄り「お前のせいじゃない、お前のせいじゃない」と繰り返し、力強く抱き締めた。3年生にとっては最後の冬。悔しくないわけがない。けれど、それを口にする部員は誰一人いない。そこには東明モットーである“エンジョイラグビー”を通して紡いだ確かな絆があった。

 

 試合後「県総体から大きく成長したと感じる試合だった。同等以上の戦いができたと思う」と選手をたたえた白田誠明監督。3年生には「君たちは負けてない。先輩の思いを引き継いでしっかりと(優勝を)成し遂げてくれた。途絶えたことは何もない。胸を張って卒業しなさい」と声を掛けたという。

 涙を拭った馬越は「今回の試合には、下級生もたくさん出場した。この試合で経験したことを後輩に伝えてほしい」と後輩に思いを託し、会場を後にした。 

 

代表権は獲得できなかったが、3連覇を達成した大分東明

 

 

(甲斐理恵)

 

大会結果