国スポ 期待高まるチーム大分 今年も千点以上目指す 【大分県】
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3年生、夏物語 vol.12 カヌー女子 ケンカするほど仲良しの川井花菜&森桜子の大分舞鶴ペアが日本一
高校最後の夏に日本一に輝いた“パンチのある”2人が振り返る。「あまり実感はないけどすごかったんだなと思う」と森桜子(3年)。「優勝したときはめちゃくちゃうれしかった。おめでとうと多くの方に言われ、じわりじわりとこみ上げてくるものがある」と川井花菜(同)。カヌーの全国高校総体を終えて1カ月。女子スプリントの200㍍カヤックペアで日本一になった2人は、同500㍍では4位、2年生2人を加えた200㍍フォアで4位。川井は200㍍シングルで3位となり、さらに大分舞鶴として女子総合2位と数々の結果を残した。
森と川井の2人は小学生の頃からの友だちだ。ともにスポーツ万能で活発な女の子だった。森は野球、川井はバスケットボールでその能力を存分に発揮した。休み時間になるとドッジボールで、男の子顔負けのパワーを見せる川井、正確なコントロールの森。タイプは異なるが西の台小学校の二代巨頭として名をはせたのだとか。「私たちは最強でした」と2人は笑う。
中学は別々の学校となったが、2人がめぐり合うのは高校のカヌー部に入部したときだ。「高校で野球を続けることができないので、強い部で部活をしたかった」と新たな挑戦に燃える森。大分県が取り組む「チーム大分ジュニアアスリート発掘事業」の1期生として身体能力の高さを買われ、足立和宏監督の熱烈な誘いを受けて入部した川井は、「ジュニアアスリートでいろいろな競技をしたけどカヌーが一番嫌いだったし、バスケへの未練があって気持ちを切り替えることができなかった」。最初のモチベーションの差は練習に表れ、習熟度の差となり、タイムにも明確に表れた。入学当初はペアを組んでいたが、“方向性の違い”でコンビを解散。川井は「いろんなことがあって」と苦笑い。1年がたった頃に「日本一を目指すなら川井とコンビを組んでみないか」という足立監督の勧めもあり、森が再結成を持ちかけた。
全国高校総体で優勝した川井花菜(右)・森桜子ペア
どこでスイッチが入ったか、今となっては分からないようだが、次第に2人でタイムを競うようになり「練習すればするほどタイムが良くなった」という川井。これまで経験したことのない、記録が伸びる快楽を味わい、カヌーの楽しさを知る。そこから日本一に向けての本格的な挑戦が始まった。「何でも言い合える仲」(森)であるからこそ衝突もするが、それは互いに要求することが高いからこそ。艇の上でケンカすることもあったが、森は「お互いがアドバイスを聞けるようになった。心が広くなった」と笑う。
足立監督の熱心な指導と「これまでやってきた競技と比にならない練習量」(川井)でタイムを伸ばし続けた。持久力タイプの森が前席で、瞬発力がありスタートダッシュを得意とする川井を後席にするのが「無難でスタンダードだった」(足立監督)が、最後の大会を前に前後の組み合わせを変えたことで「2人の能力がかみ合った」(同)。パドルの回転速度が増し、正確なリズムを刻み、矢のように水面を突き進む。最後の大会となった全国高校総体では、パンチの効いた爆発力で冒頭の好結果を出し、2人の最終章に花を添えた。森は「あっという間の3年間だった。悔いはない」と振り返り、遠回りはしたが川井は「“大好き”なカヌーを続け、世界で活躍できる選手になりたい」と目標を掲げた。
「充実した3年間を過ごせた」と振り返る2人
(柚野真也)