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トリニータ 真面目さが裏目に… 秩序のある自由が必要

トリニータ 真面目さが裏目に… 秩序のある自由が必要

 5節から7連敗―。12節清水戦に勝利して連敗は止まったが、13節湘南戦で再び黒星を喫す。序盤戦から大分トリニータは想定外の事態に直面することになった。今オフに主力が抜け、新加入の選手に戦術が浸透しきれずにいる。在籍9年目、片野坂知宏監督が指揮した2016年からチームの移り変わりを見てきた松本怜は、「自陣深くでボールを動かすが、(昨季までのように)パスが回ってこない。効果的なパスが出せないから苦し紛れのロングボールが多かった」と分析する。ゴール前までボールが届かず、シュート数が2桁を超えたのは2得点した11節の浦和戦のみ。試合数にバラつきはあるが、前節までの総得点はワースト2位タイの8得点。決定機が少なく、ゴールネットを揺らせない場面が目立った。そのうえ、守備でも踏ん張れず、無失点の試合はここまで1試合。攻守の歯車がかみ合わなかったことが、この低迷を招いた。

 

 片野坂監督は苦悩していた。「選手たちは狙いを持ってプレーしているが、勝てないのは自分の力のなさ」としつつ、こう続ける。「戦術に捉われ過ぎている。選手が迷いなくプレーできるようにしなければいけない」。指揮官は、監督に就任して6年目の今季も同様に、熱いコーチングで選手たちを鼓舞し続けている。そして、選手たちもそれに応えるために真摯(しんし)に練習に取り組んでいる。居残り練習をする者も多く、誰もがこの状況を抜け出そうともがいていた。

 

勝利を求め練習にも熱がこもる

 

 最近の練習では、いい意味でピリッとした緊張感があるという。「要求を突きつけ合うことが増えた。球際や切り替えが甘いと厳しい声が出ている」とは副キャプテンの長谷川雄志。それら練習の成果が形となったのが清水戦。最終ラインを高く設定し、敵陣から守備を仕掛けることで全体がコンパクトな陣形となった。ピッチの各地で選手の意思疎通が感じられ、統制のある守備から攻撃がスムーズになり勝利を収めた。しかし、湘南戦ではシステムを変更したことで立ち位置が変化し、微妙なズレが生じた。守備がハマらず、球際や切り替えなど、1対1の局面で上回られたときの柔軟な対応ができなかった。片野坂監督は「うまくいかないときのプランを持っていなかった自分の責任」と悔いたが、ハーフタイムを挟んでもなお立て直せなかったのは、やはりチームとしてのコミュニケーションに課題があったと言わざるを得ない。

 

 片野坂監督のサッカーは、ピッチのどこにボールがあるかを踏まえて、選手たちが的確な位置をとることで成り立つ。ただし、立ち位置や距離感など、細かい部分は最終的にピッチ上の選手たちで判断しなければならない。チーム作りは“秩序のある自由”が大事であり、その片方だけでは難しい。片野坂監督は「狙いとするベースはあるが思い切って表現してほしい」と話し、松本は「選手個々の柔軟性が必要」と語る。

 チームを構成するための秩序と、選手個々を生かすための自由。この二つのバランスが合致すれば、残留争いから抜け出すことは困難なことではないと思っている。

 

苦悩が続く片野坂知宏監督

=写真は大分トリニータ提供=

 

 

(柚野真也)

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