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全国高校選抜大会 ハンドボール女子 流れを変える守護神・丹後佳凜(大分鶴崎 新3年)

全国高校選抜大会 ハンドボール女子 流れを変える守護神・丹後佳凜(大分鶴崎 新3年)

 ゴール前に立つその姿は、ただの守護神ではない。相手の勢いを断ち、味方に勇気を与え、会場の空気まで変えてしまう。全国高校選抜大会に7年ぶりの出場を果たした大分鶴崎で、確かな存在感を放ったのがGK丹後佳凜(2年)だ。

 地元開催の大舞台。初戦のいなべ総合学園(三重)戦で大分鶴崎は延長の末に32―30で競り勝った。その勝利を語るうえで、丹後の名は欠かせない。とりわけ象徴的だったのが、7メートルスローを3本連続で止めた場面だ。ハンドボールにおける7メートルスローは、サッカーで言えばPKに近い。守備側にとっては圧倒的に不利な状況であり、決められて当たり前。だからこそ、そこで止めるGKは試合の流れを一気に引き寄せることができる。丹後はまさに、その最も価値の高い仕事をやってのけた。

好セーブを連発した丹後

 本人も「あのときはちょっと神がかっていた感じがあった」と笑う。相手の手の位置、シュートの入り方、体の向きからコースを読み、予測した場所へ体を運ぶ。本人が「リーディングが一番大事」と語るように、その好守の土台にあるのは、感覚だけではない冷静な観察と判断だ。動画で見返すと、自分では考えて動いているつもりの時間と、実際のプレーの速さがまるで違うという。その独特の時間感覚もまた、GKというポジションの深さを物語っている。

 もっとも、その歩みは一直線ではなかった。中学時代には全国大会でベスト8を経験した実績がある一方で、高校入学後はすぐにハンドボール部へは入らなかった。最初に所属したのはESS(英語を使ってさまざまな活動を行う部活動)。競技から少し距離を置いた時期もあった。それでも同級生に誘われ、テレビ越しに見たオリンピックの熱気に心を動かされ、10月にコートへ戻った。だが、復帰は簡単ではない。体力は落ち、判断も鈍る。「どうやってプレーしていたっけ」と戸惑い、「中学時代の自分に戻りたい」と思いながら練習を重ねたという。

 転機は、自分たちの代になってから訪れた。周囲の言葉が少しずつ自信を育てた。「褒めてもらえることを素直に受け取るようになった」。その変化は、プレーだけでなく表情にも表れている。試合中、丹後はよく笑う。自分が沈めば、チームの空気も沈む。だからこそ、声を出し、笑顔を見せ、仲間を前向きにする。シュートを止める技術だけでなく、士気を高める振る舞いまで含めて、すでにチームの中心なのだ。

次の目標は全国高校総体出場となる

 小林宏匡監督もその価値を認める。「7メートルスローを止めてくれたのは大きかった。最後に彼女がいる安心感はある」。一方で、課題も明確だという。終盤には、自ら止めた直後に時間を使うべき場面でパスを選んだ。さらに、角度のないサイドシュートへの対応には伸びしろが残る。それでも小林監督は言う。「丹後は試合の空気を変えられる選手。試合を制圧するような存在になれる可能性がある」と。

 2回戦の神戸星城(兵庫)戦では15―44で敗れた。全国上位校との力の差は、現実として突きつけられた。それでも、この大会が残した意味は小さくない。丹後は「結果だけでなく、自分たちの中でやり切ったと思えるプレーができた。自信を持って次につなげたい」と前を向く。敗戦もまた、次の成長のための材料になる。夏の全国高校総体へ向かうその歩みは、ここからさらに面白くなる。


(柚野真也)

大会結果