
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
数年前からよく耳にする、相撲を愛してやまない女性ファンを表す「スージョ」という言葉。けれど、それはあくまでも力士たちにエールを送るファンのことで、まだまだ自らが土俵に上がる女子相撲の認知度は低い。
高校生力士に交じって、稽古場で出会ったのが中学3年生の山口紗奈・結奈姉妹だった。一卵性双生児の2人は背丈がほぼ変わらず、顔立ちもそっくり。けれど、常に考え、頭を使って戦うタイプの姉・紗奈と、相撲センスが光り器用な妹・結奈。力士としてのタイプは全く違うというのだからおもしろい。
小・中学生のジュニア力士が集う「桜丘相撲クラブ」に所属する姉妹は、週末のみ楊志館高校相撲部の稽古に参加している。同校では数年前に女子部員の受け入れを始めた。専用の稽古場を持ち、志の高い高校生力士たちが日々練習に打ち込む。練習時間は平均して3時間程度。稽古ではときに体格差の大きい男子と一緒に土俵に立つこともあるが、2人はひるむことなく全力でぶつかっていく。
姉の山口紗奈(左)と妹の結奈。父親が元力士で、姉や弟も相撲をしている
8月に岐阜県で行われた「全日本女子相撲郡上大会」では、中学生個人の軽量級部門で妹の結奈が頂点に立ち、姉の紗奈は準優勝だった。2人はこれまでにも多くの大会で表彰台に上がり、今回のように決勝戦での姉妹対決も珍しくない。共に上位進出を目指すチームメイトであり、ライバルでもある姉妹に関係性を尋ねると、「どんなときでも勝敗はつくし、悔しいこともあるけど、私たちの場合はどちらが勝っても2人でつかんだ1位。でも1人が負けたら、私が絶対にやってやる!という気持ちでいつも戦っています」。なんとも双子らしい答えが返ってきた。片方が負けてしまうと、なぜか自分まで調子を崩す。そんなこともあるというから驚きだ。
大会では、どちらかの試合がある度に出場する方の背中を叩き、気合を注入している。そして土俵へ送り出すときの言葉は「決勝で会おう!」。2人にしか分からない、姉妹の深い絆がある。
目指す階級での大会出場権を得るため、減量などの体重管理に苦労したこともあった。稽古でも日々壁にぶつかることはある。それでも取材の最後に姉妹は、「相撲が大好きです!」と笑顔で語ってくれた。姉妹の活躍をこれからも応援したい。
土俵に立つとこれまでのあどけない表情から一転。力士の表情になる
相撲を始める前は柔道をしており、その経験が今に生きているという
(塩月菜央)
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