県高校新人大会 サッカー女子 勝ちながら学ぶ 日本一の柳ケ浦 新章開幕 【大分県】
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開幕前最後の対外試合となった北海道コンサドーレ札幌とのプレシーズンマッチ。大分トリニータは1―0で勝利を収めた。スコアは最少得点差。しかし、その内容を振り返る新キャプテン榊原彗悟の表情からは、安堵(あんど)の様子はほとんど感じられなかった。
「勝てたのは良かったが、課題も多く出た試合だった」。相手が前半に退場者を出し、数的優位に立ちながら引いた相手をどう崩すか。後半に相手がフォーメーションを変え、リスクをかけて前に出てきた中で、どのように前進するか。榊原は一つ一つを具体的に挙げ、ピッチ上で起きていた事象を整理するように言葉を選んだ。そこに感情の起伏はない。あるのは試合を俯瞰(ふかん)し、構造として捉えようとする冷静な視線だ。
結果に満足することなく、数的優位の中で生まれた停滞や主導権を握り切れなかった時間帯に目を向ける。その厳しさは自分自身だけでなく、チーム全体に向けられている。勝利の裏に潜む課題から目を逸らさない姿勢。その積み重ねこそが榊原がキャプテンに選ばれた理由である。

今季、榊原は背番号8を背負う。横浜F・マリノス時代にキャプテンを務めていた喜田拓也への憧れが、その選択の背景にある。「尊敬している存在」。多くを語らずとも、その一言に思いは凝縮されている。派手なパフォーマンスよりも、90分間を通じてチームのリズムを整え、球際で体を投げ出し、周囲と対話を重ねる。榊原が目指すキャプテン像は、声の大きさではなく姿勢で示すリーダーだ。
四方田修平監督は榊原をキャプテンに据えるという判断に迷いはなかった。これまでの実績、昨季1年間で築いた信頼関係、年齢的な立ち位置。加えて、真面目で熱く、上下どちらともコミュニケーションを取れる人間性。四方田監督は「こうあるべきだ」と型を押し付けることなく、「彼なりのスタイルで引っ張ってほしい」と託した。チームを一方向に導く旗振り役ではなく、選手と選手の間に橋を架ける存在。その資質を、榊原に見たのである。
本人にとってキャプテンは初めての大役だ。指名を受けたのは開幕を目前に控えたタイミング。驚きはあったが断るという選択肢はなかった。「成長できるチャンス」。そう捉え静かに覚悟を固めた。キャプテン経験がないことを理由に気負うことはない。むしろ探り探りであることを自覚しながら、一歩ずつ自分の形を築いていく。

プレー面でも榊原はチームの軸になろうとしている。繊細なボールタッチと配球で攻撃にリズムを与え、昨季は球際の強さでも存在感を示した。今季はプレー強度のさらなる適応が求められるが、その先に主軸としての飛躍が見えている。ボランチで組む山口卓己との関係性も良好で、互いの良さを引き出し合う感覚はチームの安定感につながる。
勝利を喜びながらも課題を口にし、次を見据える。その姿は新キャプテンとしての自覚そのものだ。開幕を前にしたチームは、まだ完成形ではない。しかし、確かな手応えと伸びしろを併せ持っている。その中心で背番号8は今日もピッチを見渡し、チームの進むべき方向を確かめ続けている。
(柚野真也)
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