OITA SPORTS

1/9 FRI 2026

supported by

立孝社

サッカー サッカー

NEW!

大分トリニータ 山口卓己 原点大分で再び挑む理由とは 【大分県】

大分トリニータ 山口卓己 原点大分で再び挑む理由とは 【大分県】

 大分トリニータに、新たな時間を刻む男が帰ってきた。山口卓己。大分中学、大分高校での6年間を過ごし、県内屈指のボランチとして注目された選手である。全国総体、全国高校サッカー選手権という大舞台を経験しながらも、高校卒業時にJクラブからのオファーはなく、鹿屋体育大に進学してプロを目指した。大学では1年時から試合に出場し、4年時に鹿児島ユナイテッドFCの強化指定選手となってプロ契約をつかんだ。

 プロ入り後も派手さはないが、正確なパスと判断力で中盤から試合を組み立てる役割を担ってきた。168センチ、64キロと体格には恵まれていないものの、運動量と安定したプレーで主力として定着し、J2昇格とJ3降格の両方を経験してきた選手である。

 J3鹿児島で迎えた昨季は、その積み重ねが数字として結実した。6得点7アシスト。ボランチでありながら、攻撃に深く関わり、前線を生かし続けた。その姿は、いまの大分が求める「即戦力」に他ならない。

大分高校出身の山口

 移籍の決断は、昨年12月30日。文字どおり年の瀬だった。他クラブからのオファーもあり、返事をしようとしたその直前、大分からの連絡が入った。「運命だと思った」。その言葉は決して軽くない。妻の実家が大分にあり、鹿児島時代から何度もこの地を訪れていた。それでも、青いユニフォームに袖を通す意味は特別だった。

 新天地での山口は、すでにチームの中に溶け込んでいる。若い選手が多いチーム構成の中で、自身を「中堅」と位置づけ、プレーだけでなく姿勢で示す役割を自覚している。穏やかな空気に身を置きながら、肩肘張ることなくプレーする。そのたたずまいが、いつの間にかチームの軸になっている。

 特徴的なのは、細部ににじむ人柄だ。高校時代のマッシュヘアから、昨季途中で変えたパーマ。結果が出たから「しばらくはこれでいこう」と笑う。背番号は72。鹿児島で愛着のあった27は埋まっていたが、「反対にしただけ」と肩の力は抜けている。中学、高校でつけた10番が空いていると聞いても、「まだ早い」と即答する。その謙虚さは、これまでの歩みが育てたものだ。

アシストでチームの勝利に貢献すると語った

 得点力不足が課題とされるチームにおいて、山口は自らを誇示しない。得点よりもアシスト。仲間を生かすことで勝利の確率を高める。その視線は常に全体に向いている。本職はボランチだが、昨季は攻撃時にはトップ下も経験してプレーの幅を広げた。

 今季は「0.5シーズン」と呼ばれる特別な時間になる。だが山口にとって、それは助走ではない。数字にこだわりながらも、まずは自分を高める。1日1日を積み重ねる。その先に、チームの未来があると知っている。

 穏やかな語り口の奥に、確かな覚悟がある。中盤で静かに試合を支配する背番号72が、再び大分の風景に溶け込んでいく。トリニータでの新しい時間が、すでに動き出している。


(柚野真也)

大会結果