OITA SPORTS

12/30 TUE 2025

supported by

カーウェル

陸上競技 陸上競技

NEW!

3年生、冬物語 駅伝女子 都大路結んだ3年生のタスキ 【大分県】

3年生、冬物語 駅伝女子 都大路結んだ3年生のタスキ 【大分県】

 冬の都大路。全国から集った57校がタスキをつなぐ舞台で、大分東明の女子は17位でフィニッシュした。順位以上に強く胸を打ったのは、最後の都大路にすべてを懸けた3年生たちの物語だった。

 県代表として何度も立ってきたこの舞台だが、今年の都大路はこれまでとは意味が違った。下級生の台頭、厳しいメンバー争い、そして故障や不安を抱えながら迎えた本番。簡単に主役になれる立場ではなかった3年生がそれでも最後にチームの中心に立ち、流れをつなぎ、背中で示した。その一歩一歩に積み重なっていたのは、結果だけでは測れない3年間の時間と覚悟だった。

 県予選からメンバーと配置を大胆に入れ替えた。藤井裕也監督が託したのは、伸び盛りの1年生の勢いと3年間積み重ねてきた上級生の覚悟だった。1区から3区は1年生。勝負どころの4、5区に3年生を据えた。その起用は実力主義を貫く藤井監督の哲学でもあった。「学年では選ばない。練習で結果を出した者を使う」。その言葉通り大野貴瑛(3年)は6、7番手からはい上がり、実力でメンバーを勝ち取った。

選手の右腕には「俺たちならできる」と監督のメッセージが記されていた

 4区を任された大野は、下りを生かした積極的な走りで区間10位。後輩がつくった流れを止めず、前へ前へと運んだ。そのタスキを待っていたのがキャプテンの滝川ゆめ(3年)だった。中継所で見せた笑顔には理由がある。高校3年間を通じて、公式レースで大野から直接タスキを受け取った経験は一度もなかった。区間やメンバーがかみ合わず、同じレースに出場してもタスキリレーの順番が重なることはないまま時間だけが過ぎていった。だからこそ、都大路の中継所で実現した「3年生から3年生へ」のタスキは特別だった。それは偶然ではなく、最後の舞台でようやく巡ってきた必然の瞬間だった。「最後は笑顔でつなごう」。3年生同士の約束が都大路でようやく果たされた瞬間だった。

 滝川にとって、3年生4人は「家族」のような存在だという。言葉を交わさずとも同じ心で戦っていることが分かる。苦しい練習を一緒に乗り越えてきた。キャプテンとして滝川が最も力を注いだのは「けがをしないチームづくり」だった。セルフケアの大切さを伝え、ヨガやストレッチを日常に落とし込んだ。ライバルである下級生にも惜しみなく伝える。「駅伝は一人では勝てない。周りが強くなることで自分も成長できる」。その姿勢が、チーム全体の底上げにつながった。

5人抜きでゴールした滝川

 17位。目標としてきた入賞には届かなかったが、その差は決して大きなものではなかった。藤井監督は言う。「10位台で終えたことは来年につながる。たった1つの隙、1つのブレーキがあれば、入賞は一瞬で遠ざかる」。女子駅伝のレベルが年々上がる中、わずかな乱れが結果を分ける。その厳しさを3年生たちは身をもって示した。

 だからこそ、3年生が残したものは大きい。日常の取り組み方、練習への向き合い方、そして本番で責任を引き受ける覚悟。順位表には載らないが、確かにチームに刻まれた財産を後輩たちに手渡した。都大路で3年生の駅伝は終わった。しかし、その背中が示した基準は、次の世代の走りの中に生き続ける。


(柚野真也)

大会結果