
大分トリニータ 責任背負い挑む吉田真那斗の夏 【大分県】
サッカー
大分トリニータが動き出した。17日にシーズン必勝祈願、新体制発表会を終えた翌日の午後、大分市内の練習場に片野坂知宏監督以下、全スタッフと新加入12選手を加えた全選手が集結。ミーティングから軽く体を動かし、コミュニケーションを図るパス回しなどのメニューで初日を終えた。今後は徐々にフィジカルを高め、片野坂監督が「まずは大分の戦術を理解してもらい、どんなプレーをしてほしいのか明確にしたい」と新体制発表会見の席で語ったように、戦術を落とし込む。
初日のミーティングでは片野坂監督から、今季の目標と修正する課題が数値として挙げられた。チームの目標は1桁順位となる9位以内。「勝ち点50以上、得点は45、失点は40~45を達成すれば目標が見えてくる」。この数値の算出には、今季は例年より2チーム多い20チームでリーグ戦が行われ、34試合から38試合に増えることを加味し、20チームでリーグ戦が行われるイングランドのプレミアリーグを参照したという。また、38試合を5クールに分け、第1から第4までの1クールを8試合とし、3勝2分3敗で勝ち点11。第5クールは6試合とし、2勝2分2敗で勝ち点8。計画ではトータル勝ち点52になる算段だ。
修正する課題においては、得点が過去2年とも40点未満に終わったデータを示し、「得点が勝ち点につながる。そのためには(得点機に関わる)当事者の戦術理解とクオリティーが直結する」と説き、セットプレーから失点の多かった昨季の傾向と対策を具体的に示した。
開幕に向けてし烈なポジション争いが始まる
就任6年目の「片野坂体制」に一切のブレがない。開幕まで6週間の準備期間を確保したのは、過去5年で培った経験であり、数値を示したことはリアリティーを強調し、明確な戦術を落とし込むために必要なことであった。オフには、片野坂監督が就任した1年目から主力として戦い、成長した選手が移籍する“想定外”があったが、「抜けた穴はクラブと話し合い、自分がリクエストした選手はほぼ取れた」と指揮官もフロントも落ち着いたものである。「どんなサッカーをするのかを明確にし、ゲームモデルが浸透すれば戦力は(昨季より)上げることができる」と強調した。
ミーティングで片野坂監督は選手にこう語り掛けたという。「いよいよシーズンが始まる。新戦力を含め29人で一致団結して戦っていこう。ピッチで躍動し、アグレッシブに戦う姿勢を見せてほしい」。この言葉で一気に選手を引き込み、やる気にさせた。
その訓示を聞く選手の表情にも変化があった。今季からキャプテンとなる高木駿が「(在籍年数の長い選手が抜けたが)これまでのいいところは継承して、勢いのある、力強さのあるチームにしたい」と抱負を述べれば、チーム在籍8年目の伊佐耕平は「まだみんな遠慮している。コミュニケーションが取りやすい雰囲気をつくりたい。これまで以上にファンやサポーターの思いを背負ってプレーしたい」と力強い言葉を発した。
選手の表情や周囲との関係性、新加入の選手に対しては映像で見たイメージと実際の動きを照らし合わせ、細部に至る部分まで考察する片野坂監督の頭の中には2021年版のチームが練り上げられている。当然ポジション争いは激化するが、チーム力アップに欠かせないことであり、競争が選手たちのモチベーションにつながっている。実戦トレーニングが増えるにつれて、チームの形が見えてくるだろう。周到な補強戦略で陣容を整えた大分の新たな戦いが始まる。
選手のコンディションをチェックする片野坂知宏監督
(柚野真也)
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