冬の高校スポーツ全国大会 壮行会で示す全国への覚悟 【大分県】
バレー
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26年連続で春の高校バレーに出場する東九州龍谷。その目標は一貫して「日本一」である。常勝軍団であるがゆえに課された宿命であり、逃げ場のない言葉でもある。今大会はノーシードからの出場となるが、チームに焦りはない。キャプテンの藤崎愛梨(3年)は「1回戦から戦えることで勢いをつけられる。どこと当たるかではなく、自分たちのバレーを出し切れるか。それだけ」と淡々と語る。その姿勢こそが、このチームの現在地を物語っている。
竹内誠二監督もまた、冷静に戦況を見据える。「今大会はどこも力の差はない。どこにでもチャンスはある」。その言葉に慢心はなく、むしろ警戒心がにじむ。だからこそ、日々の練習は無駄を削ぎ落とし、短時間で高い負荷をかける内容に徹している。恒例のAチーム対Bチームの紅白戦は、公式戦さながらの緊張感に包まれる。「相手のペースでやらせない。粘り強く拾い、攻撃につなげる」。監督の意図は明確だ。

レシーブの中心を担うのは、主将の藤崎とリベロの源田真央(3年)だ。しかし、この2人に守備の負担を押し付けるような役割分担は存在しない。エースの忠願寺莉桜(2年)を含め、全員が同じ基準でボールに向かい、誰一人として拾う責任から逃げない。まずは粘り強くレシーブを上げ、ラリーの主導権を握る。その土台があるからこそ、攻撃力の高いアタッカーが力を発揮し、確実に得点へと結びつける。一見するとシンプルだが、この徹底こそが、チームとして積み上げてきた勝利の方程式である。
全国高校総体はベスト8、国スポは3位。数字だけを並べれば、確かな前進と言える成績だ。しかし、チームの空気に達成感はない。国スポ準決勝、2セットを先取しながら逆転を許した一戦の記憶が、今も選手たちの胸に重く残っている。「勝てた試合を逃した」。その悔しさは結果以上に内容への厳しい評価を生み、練習や試合への向き合い方を変えた。一本のレシーブ、一本のトス、一本のスパイク。その精度をどこまで高められるか。あの敗戦が、日常の基準を引き上げ、春の大舞台へ向かう原動力となっている。

3年生にとっては、これが高校最後の舞台となる。実際にコートに立てる選手は限られるが、竹内監督は「最後は3年生の結束力がものをいう」と繰り返し強調する。プレーで流れをつかむ者がいれば、ベンチやスタンドから声を張り、空気をつくる者がいる。試合に出られない悔しさをのみ込み、チームのために何ができるかを考え抜く姿勢もまた、勝利に欠かせない要素だ。コート内外が一体となったとき、本来の強さを発揮する。その総力が、最後の一歩を押し出す力になる。
練習着の胸には「春高優勝」の文字。手のサポーターには「日本一」「氣」と、それぞれの思いが刻まれている。全国高校総体、国スポと積み上げてきた歩みは、大舞台で跳ねるための助走にすぎない。静かな闘志を燃やしながら、日本一への階段を一段ずつ踏みしめている。
(柚野真也)
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