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冬の主役たち サッカー女子 三度目の舞台へ 田淵聖那が背負う覚悟 【大分県】

冬の主役たち サッカー女子 三度目の舞台へ 田淵聖那が背負う覚悟 【大分県】

 全国の舞台で結果を積み重ねてきた柳ケ浦。その成長曲線の中心に田淵聖那(3年)の存在があった。2年前の全日本高校女子サッカー選手権3位、昨夏のインターハイ3位。いずれの躍進も、まだ下級生だった田淵が大舞台で体感したものだ。今年、最終学年でキャプテンを任された理由は明白である。経験、技術、覚悟。そのすべてを備え、チームの軸として揺るがぬ影響力を持つからだ。

 身長150センチと小柄だが、中盤の底に位置するボランチとして攻守の流れを支配する。林和志監督が「経験値が高く、気の利く選手」と評するように、試合の機微を読み、次の局面を先回りする能力は突出している。こぼれ球への反応、相手の意図を断ち切るポジション取り、縦パスで一気に試合を動かす決断力。長短のパスを自在に操り、展開の起点となる姿には、攻守のスイッチャーとしての自覚がにじむ。

3年間努力をし続け、今がある

 その裏には、本人の努力が息づく。体格で劣る自分を理解し、走力と球際の強度を磨くために誰よりも走り、3年になってからは食事量を見直し、ウエイトトレーニングで当たり負けしない体をつくった。言い訳をしない選手は強い。田淵はまさにその典型である。

 3度目の全日本選手権を迎えるにあたり、田淵には胸に刻み続けている場面がある。前回大会の3回戦、延長でも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ。重い空気が張りつめる中、仲間の期待を背に放った一本は無情にも枠を外れた。「あの負けは自分のせい。忘れたことはない」。泣き崩れるチームメートの姿、肩を落とした自分、静まり返ったベンチ。その光景は今も鮮明だ。

 だが、田淵は悔しさにのまれなかった。むしろ、その痛みこそが全国の舞台に立つ理由を強固にした。「取り返したい」という思いが日々の練習の質を変え、判断の速さ、球際の強さ、パスの精度、すべてに妥協しない姿勢を生んだ。失敗のままでは終われない。その決意が田淵のプレーの芯を太くし、キャプテンとしての言葉に重みを与えている。

「一戦必勝の先に日本一がある」と語った

 今年の柳ケ浦は、スピードに秀でた1年生、年代別代表にも選ばれた選手がいる2年生と、下級生のタレントが豊富だ。しかし、田淵は知っている。「最後は3年生の力が勝利を決める」。経験が、言葉ではなく重みとして全員に伝わるからだ。「3年生12人でいい雰囲気をつくって、いい準備をして大会に臨みたい」

 目指すのはもちろん頂点だ。ただし、焦りやおごりは一切ない。「一戦一戦、全力で戦い、勝ち切った先に最高の景色がある」。その言葉が示すのは、積み重ねでしかたどり着けない高みを知る者の視点だ。田淵は3年間のすべてをこの冬に注ぐ。


(柚野真也)

大会結果