冬の高校スポーツ全国大会 壮行会で示す全国への覚悟 【大分県】
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全国の頂点を視野に入れ、柳ケ浦のエースガード古謝脩斗(3年)が静かに闘志を燃やしている。県予選決勝では終盤に勝負を決める3点シュートを沈め、続くU18日清食品ブロックリーグでは7戦全勝の原動力になった。「絶好調」と笑う表情には、迷いのない自信が宿る。全国の注目は留学生エース、ファデラ・ママドゥ(2年)に集まりがちだが、「柳ケ浦は留学生だけではない。自分も点を取り、仲間の力も証明したい」と譲らぬ気持ちをにじませる。

沖縄出身の古謝は、同郷の中村誠監督を慕い、迷わず柳ケ浦の門を叩いた。卓越したハンドリングと独特のリズムで相手を揺さぶるドリブルは、1年生の頃からコートに立つだけの説得力があった。しかし、その才能ゆえに自分でなんとかしようとしすぎる癖も強く、ボールを持ち続けた結果、勝負どころで相手に奪われてしまう場面が少なくなかった。期待されているのに応えきれない日々が続き、気づけばベンチに座っている時間ばかりが増え、焦りと苛立ちが表情や態度に出るようになった。
そんな停滞を変えたのが、今春の九州大会前に行われた中村監督との1対1の面談である。「お前、いつまでその態度を続けるんだ」。静かな口調ながら逃げ場のない言葉に、古謝はせきを切ったように涙を流したという。指摘されたのは技術ではなく心の持ち方だった。その瞬間、古謝は初めて自分の殻と向き合った。以降、プレーにも言動にも責任感が宿り、判断の質は格段に上がった。試合中に崩れそうな流れでも、立て直す術を自ら探れるようになった。中村監督は今の古謝をこう評する。「一番小柄なのに、一番頑張っている。悪い流れでもすぐ修正できるようになった。彼の出来が勝敗を左右すると言っていい」。叱咤(しった)が導いた覚醒だった。

支えたのは家族の存在もある。「柳ケ浦でバスケがしたい」という息子の決断を、両親は迷わず後押しした。母・江里奈さんは「親元を離れた3年間、寂しさはあったが、本人を信じきると決めた」と語る。大事な試合には親戚一同が沖縄から駆けつけ、会場はまるで「古謝応援団」のようになる。今回の県予選でも母は息子のプレーを何枚もシャッターを切り、ハーフタイムには沖縄の定番曲「ダイナミック琉球」を一気に歌い上げ、会場を沸かせた。古謝は「優しく、時に厳しく自分を正してくれる存在。ウインターカップで活躍して恩返ししたい」と胸に刻む。
療養していた中村監督が復帰し、チームの完成度は日に日に上がる。古謝の掲げる最低ラインはベスト8。順当に進めば、全国総体で惜敗した鳥取城北と準々決勝で再戦する。「城北はウチに勝って、その勢いで日本一になった。もしウチが勝っていたら……」。悔しさを忘れたことはない。沖縄から託された声援、柳ケ浦の誇り、そして、自分自身の力を証明するために。リベンジの舞台で古謝は光を放つつもりだ。
(柚野真也)
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