大分県U―11サッカー選手権 攻撃サッカーでスマイス・セレソンが頂点に 【大分県】
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昨冬の全国高校サッカー選手権、今夏の全国高校総体は、いずれも初戦敗退という悔しさだけが残った。大分鶴崎のエース河野歩夢(3年)は、その現実を誰よりもかみしめてきた。「全国1勝」。今年、河野が掲げ続けてきた、たった一つの目標である。県内では新チーム結成後から主要な公式大会では負けなし。だが河野は言う。「全国ではまだ勝てていない。勝つ姿を後輩に見せたい」。その言葉には、チームを背負う覚悟の重さと、ゆるぎない決意がにじむ。
この1年、河野は心身のすべてを変えた。3月には九州U―17選抜として「サニックス杯国際ユースサッカー大会2025」に出場。Jクラブの精鋭たちを目の前で見て、自身の立ち位置を突きつけられた。「もっと成長しないといけない」。その刺激はプレーを根底から変えていく。一人よがりのドリブルは影を潜め、パスの選択、ポジショニング、守備の献身…、チームを勝たせる選手へと意識を切り替えた。首藤謙二監督は「精神的に強くなった。周囲を生かすプレーの幅が広がった」と成長を語る。

中学時代は大分トリニータの下部組織で切れ味鋭いドリブラーとして知られた。しかしU―18への昇格はならず、大分鶴崎へ進むことになった。「あの悔しさがあったから今がある」。河野はそう振り返るが、その背景には、本人にしか分からない大きな壁があった。
成長期に一気に身長が伸び、数カ月で数センチ単位で体が変わっていく。ボールタッチの感覚はズレ、足が思うように運べず、トラップが流れ、得意だったドリブルも空回りする。長くなった手足の使い方が追い付かず、「自分の体じゃないみたいだった」と感じるほどだったという。筋力とのバランスが崩れたこともあり、負担が集中してケガも続いた。
ピッチで思うように戦えない日々は苦しかったが、河野は決して足を止めなかった。むしろこの試練が土台となり、後の成長へとつながっていく。
高校でも身長は伸び、今では186センチ。細身ながら長い手足を生かした深い懐とキープ力を身に付けた。目指すはジュード・ベリンガムやコール・パーマーのような万能型MF。中盤のどこでも戦えて、守備から攻撃まで局面を制御し、ペナルティーエリアでは強烈な決定力を示すプレーヤー像を自らに重ねる。

最後の全国大会に向けて、その進化は確かなものとなった。毎日送り迎えをしてくれた両親に感謝し、「これまでで一番輝く自分を見せたい」と話す表情には迷いがない。大学でもサッカーを続けるつもりだが、まずは「全国1勝」。初戦の相手・山形明正の映像を繰り返し見て、イメージを深める。
「ボールが落ち着かないときこそ、自分がリズムをつくる。ドリブルで2人剥がしてチャンスをつくる。大分鶴崎のパスサッカーを全国で証明したい」。河野の目標は明確だ。全国の舞台で1勝をつかむ。その一点に向け、準備を積み上げていく。
(柚野真也)
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