ヴェルスパ大分 シーズン総括 掴みかけた昇格 痛みを糧に進む 【大分県】
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J2残留が決まった翌々日、竹中穣監督の今季限りでの退任が発表された。目標としていた昇格争いには遠く及ばず、残留は「最低限」にすぎない。その事実を、吉岡宗重スポーツダイレクター(SD)は真っ向から認める。「当初の目標に大幅に届いていない。胸を張れる成績ではない。サポーターや関係者には申し訳ない気持ちが大きい」。そう前置きした上で、「この終盤の状況で残留を確保できたことだけは、絶対に必要だった結果だ」とも語る。
竹中監督の退任は苦渋の決断だった。片野坂知宏前監督の下でヘッドコーチを務め、残り12試合という難しいタイミングで指揮官のバトンを託された。クラブの大方針である「湧き上がるフットボール」をピッチで表現するスタイルを共有し、短い時間でのチームづくりに挑んだ。
吉岡SDは「非常に難しいミッションの中で、大方針に沿ってトライしてくれたことには感謝している」と評価しつつも、「プロである以上、結果は避けて通れない。続投の判断には至らなかった」と決断の理由を明かす。退任発表のタイミングは、段階的に本人と話し合い、区切りをつける形となった。

竹中監督も、その決定を正面から受け止めている。退任を告げられた指揮官は、「最終的には自分が結果を出せなかった。それがすべてだ」と静かに語る。途中就任という事情を言い訳にはせず、「大きな変化をもたらせなかったことが一番の反省点」と自らを振り返る姿が印象的だった。
それでも、手応えがまったくなかったわけではない。選手たちが前向きにプレーするための土台として、ゲームモデルの理解を深めることに力を注ぎ、狙いどおりに前進の形が生まれたり、ボールを奪い切る場面が増えたりと、練習の成果が断片的にピッチへ浮かび上がった試合もあった。「全部がバツではない」としながらも、「インパクトのある変化」と呼べる段階までは届かなかったという悔いが、言葉の端々ににじむ。

クラブの将来像は、ここから再構築されていく。吉岡SDは「まずは強度。そこに前への推進力とゴールに向かう迫力を加えたチームをつくりたい」と語り、新監督には日常から高強度のトレーニングを積み上げ、「これが大分のフットボールだ」と胸を張れるベースづくりを託す考えだ。
そして迎える最終節・水戸戦。竹中監督にとってのラストゲームであることは変わらないが、「目の前の試合という意味では今までと何も変わらない」と言い切る。3連敗中のチームが、このままシーズンを終えるわけにはいかない。「この次のゲームを取らずに終わることはできない」。退任の是非ではなく、勝利だけを見据えた言葉だった。
J2残留、監督退任、そして新体制へ。大分トリニータは今、痛みを伴う転換期に立っている。その節目をどのような内容と結果で締めくくるのか。水戸との90分は、来季への“熱”を示す試金石となる。
(柚野真也)
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