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ヴェルスパ大分 シーズン総括 掴みかけた昇格 痛みを糧に進む 【大分県】

ヴェルスパ大分 シーズン総括 掴みかけた昇格 痛みを糧に進む 【大分県】

 ヴェルスパ大分の2025年シーズンは、浮き沈みを感じるシーズンだった。最終戦でアトレチコ鈴鹿を2―1で下し、6位でフィニッシュしたものの、数字では測れない葛藤と成長が詰まっていた。

 序盤の勢いは本物だった。開幕戦に勝利し、7節で首位に浮上。今季最多となる7029人を集めた17節・Honda FC戦を制し、再び首位へ。会場の熱量、サポーターの期待、クラブ全体に流れ込むような高揚感。J3昇格は確かに手の届く位置にあった。

 しかし、夏場の1カ月の中断明けのレイラック滋賀との首位攻防戦で敗れ、歯車が狂い始める。前半戦はリーグ1位の失点数という堅守を誇った一方、後半戦は簡単な失点が続き、先制しても追いつかれる悪循環に陥った。

 中村元監督は「底力が足りなかった」と振り返り、鍛え直すべき「細部の質」を痛感している。ベテランの福満隆貴は、その変化をピッチで体感した一人だ。「失点が全て」と語るように、後半戦は相手の分析が進む中で弱点を突かれ、カウンターで崩される場面が散見された。さらに「練習の強度の波」「仲の良さがそのまま試合の緩さにつながる瞬間」など、内部にこそ改善すべき課題があると率直に語る。その言葉は、チームの本質を突く。

「日頃の練習から改善すべき課題がある」と語った福満

 それでも、このチームは折れなかった。昇格の可能性がなくなった後の3試合、選手たちは割り切った戦い方を貫き、守備の原点に立ち返った。痛みを抱えながらも、前へ進む姿勢を示した点こそ、今季最大の収穫と言える。

 浜崎拓磨は、今季限りで引退するキャプテンとして、チームを支え続けた。「JFL優勝もJ3昇格も達成できず悔しい。でも、応援があったから最後まで戦えた」。この言葉には、クラブの現状を受け止める姿勢と、次につなげたいという強い想いがこもっている。浜崎が築いてきた姿勢は、来季以降のチームの基準として残っていくはずだ。

今季で引退するキャプテンの浜崎

 来季は特殊なシーズンとなる。新監督を迎え、半年間の準備期間という“伸びしろ”を最大限生かせる。半年のシーズンを強化期と捉え、その後の1年の本戦で勝負に出る戦略も可能だ。福満が語るように「方向性の明確化」と「強固な守備の再構築」は急務だが、その土台はすでに今年の経験によって築かれている。

 首位に立てたこと、苦しい後半戦を耐えたこと、大一番で涙を飲んだこと。そのすべてが、次のステップへの材料となる。失敗ではなく、必然の成長プロセスである。昇格という悲願は消えていない。むしろ今年、その現実味は増した。痛みを知った者だけが、頂点に辿り着ける。


(柚野真也)

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