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ウインターカップ県予選 苦境を力に 気持ちでつかんだ明豊が3連覇 【大分県】

ウインターカップ県予選 苦境を力に 気持ちでつかんだ明豊が3連覇 【大分県】

第78回全国高校バスケットボール選手権(ウインターカップ)大分県予選
11月3日 クラサス武道スポーツセンター
女子決勝
明豊53(8―18、12―9、13―11、20―6)44大分

 ウインターカップ大分県予選の女子決勝。3年連続5度目の頂点を狙う明豊は、大分に対して序盤から劣勢に立たされた。第1クオーター(Q)で10点差をつけられた。決勝戦の3週間前にけがをしたキャプテン中島綾香(3年)は試合に出場できる状態には程遠く、チームに流れはなかった。それでも心は折れなかった。

 杉山真裕実監督は、対大分の過去1年分の映像を何度も見返し、相手のスリーツーゾーンに備えていた。だが、前半は外からのシュートが決まらず、平倉千春(3年)も厳しいフェイスガードに苦しむ。「練習通りにはいかなかった」と監督は振り返る。それでも、守備から流れをつくる「明豊の形」を貫いた。

ゴール下でチームを支えた下田

 第3Q、杉山監督は決断する。エース平倉をベンチに下げ、三重野奏(3年)や繁松椿(1年)を投入。高さと外角、ドライブからの攻撃で流れを変えようとした。采配の意図は明確だった。「(平倉が)シュート精度が落ちていたし、そこから速攻に持ち込まれる展開を止めたかった」。焦りではなく、冷静な修正だった。

 勝負を決めたのは、最終クオーターで登場した二神寧々(3年)だった。途中出場ながら、与えられた9本のフリースローをすべて成功させ、チームを逆転勝利へ導いた。「転校してきた自分を受け入れてくれた仲間に、どうしても恩返しがしたかった。その思いだけだった」と二神。緊張の場面でも揺るがなかったその集中力は、チームの窮地を救った。

勝利をもたらすフリースローを決めた二神

 ゴール下では下田来美(3年)が踏ん張った。「キャプテンを東京に連れて行きたかった。だから死に物狂いでリバウンドを頑張った」。中島の存在が、戦う力の源になっていた。観客席の仲間たちはマジックで手に「サエ(中島のコートネーム)のために」と書き、祈るように見守っていた。

 試合終了直前、杉山監督は中島をコートに送り出した。「これまでチームを引っ張ってきたキャプテンを立たせて、ガッツポーズをさせたかった」。采配に宿るのは、勝利への戦略だけではなく、指導者としての情だった。

 残り数秒、勝利を確信した瞬間にベンチも応援席も涙に包まれた。苦しい展開を乗り越え、守備で流れをつかみ、気持ちで勝った。杉山監督は試合後、ただ一言、「よかった」と笑った。それは戦術や数字を超えた勝利だった。明豊が示したのは、技術の完成ではなく、仲間を思う心がチームを強くするという証明だった。


(柚野真也)

大会結果

2023年度