冬の主役たち 弓道男子 切磋琢磨するライバルの挑戦(宇佐) 【大分県】
弓道
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県高校新人大会 弓道男子団体 勝利を通過点に 新人王者・国東が見据える先 【大分県】
県高校新人大会の弓道男子団体で国東が優勝した。29チーム(三重総合と別府翔青は合同)が集う大会で予選1位通過、決勝トーナメントも危なげなく押し切った。だがチームは浮かれない。11月の九州大会、直後の全国高校選抜大会県予選と、勝負どころはここからだからだ。
強さの根は道場の外にある。梶原寛章監督が赴任してまず変えたのは芝を整え、掃除を徹底し、あいさつと道具の扱いを正すという「当たり前」である。弓道は人が出る競技。環境を整えることが心の静まりに直結する、という信念だ。今季は栄養管理にも踏み込み、食事と睡眠を「競技の一部」として位置づけた。
練習にも無駄がない。朝練は10分のみ。睡眠を削らず短時間で一点集中する方式で、自主性を促す。県新人大会前は対戦が想定される学校と練習試合を組み、あえてフルメンバーを外す。誰が出ても同じ質を出すための布石である。さらにプレッシャーのかかる設定で射を繰り返し、実戦の心拍に体を慣らしてきた。

今大会は立ち順の前3人が安定し、後半の2人も堅実に支えたことで、チーム全体が高い平均的中率を維持して押し切った。序盤からリズムをつくり、崩れない試合運びで他校を圧倒した。周囲から「今年の国東は強い」と見られる中で、そのプレッシャーを恐れず、むしろ自信と集中力に変えられたのが大きい。選手たちは勝つことに慣れるのではなく、勝つための準備に徹した。
それでも梶原監督は満足しない。「圧倒的に勝つにはまだ足りない」と語る。結果に浮かれることなく、次を見据えている。勝利はあくまで通過点。梶原監督の視線の先には、県全体のレベルアップと、国スポで勝てる大分弓道の確立という大きな目標がある。
けん引役はエースの森蒼生(2年)。弓を引ききった瞬間まで全身で的をとらえ続ける集中力と、放つ瞬間の姿勢の安定感が光る。かつては迷いや力みが見られたが、今は呼吸と動きを整え、最後まで自分の射を崩さない強さを身につけた。本人も「止め(残身)が全員良く、予選1位は想定通り。九州は優勝を狙う」と言い切る。

全国高校選抜大会の団体戦は3人制となり、問われるのは“美しい弓”だ。離れの姿、会の充実、伸びの方向。形の美は結果を呼ぶ。九州大会では入賞を狙い、課題を拾い、全国高校選抜大会の県予選は頂点が目標。整えた道場から放たれる一本は、九州、そして全国へとまっすぐに飛ぶ。
(柚野真也)