
【指導者の肖像〜高校スポーツを支える魂〜】 信じる力が未来を変えていく 柳ケ浦高校バスケットボール部監督・中村誠(前編)
バスケ
2018年の全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)初出場以降、県内の主な公式大会で負けなしの別府溝部学園がウインターカップ県予選準決勝で敗れた。終了のブザーが鳴ると同時に選手はうなだれ、涙した。「打倒・溝部学園」を掲げる全てのチームを迎え撃ってきた2年間。追われる立場となったプレッシャーは計り知れず、頂点に立った者だけが感じる苦悩や葛藤があったことだろう。
ウインターカップ県予選の柳ケ浦との試合は、事実上の決勝戦と言っても過言ではない白熱した展開。攻守の入れ替わりがスピーディーなトランジションゲーム、正確なシュート、ルーズボールへの執念―。バスケットボールの面白さを集約したような試合は、両者一歩も譲らずシーソーゲームが続いた。「うちにもう一度流れがきていれば展開は変わっていたはず」と末宗直柔監督。第1クオーター(Q)終了時点で11点差を追う展開となるも、第2Qで逆転し、第3Qで7点差リードしたが、最終Qで逆転を許してからギアが上がらず、最後まで追いつくことができなかった。
準決勝で敗れた別府溝部学園
末宗監督は「実力を出し切ってよくがんばってくれた」と選手たちをたたえ、「彼らの個性を上手く出してあげられなかった。指導者としてもう一度勉強し直さなければいけない」と悔しさをにじませた。毎年、ウインターカップを最終目標としてチーム作りを行っているが、今回は「これまでの結果におごらず、挑戦者として戦うこと」を説いてきた。勝ち続けるのは当たり前ではないと理解しつつも、今年は試合数が少なかったこともあり、自分たちの弱い部分を実感できずにここまできた。「3連覇という言葉はプレッシャーというより、浮ついた気持ちになっていた。それがプレーに出てしまった」(末宗監督)。
今大会も得点源として活躍したゲームキャプテンの島袋琉希(3年)は、「勝ち続けている自信が小さな油断につながった」と敗因を挙げた。1年の頃から試合に出場していた島袋は「これまでは先輩たちが全国に連れて行ってくれた。今年は自分が連れて行くつもりだった」。コートに立てない3年生や後輩、支えてくれる全ての人のためにと挑んだ試合だからこそ、これまでにない悔しさを感じたようだ。別府溝部学園の躍進の象徴であったフセイン(3年)は、「同じ目標に向かう仲間に出会い、日本でバスケができて楽しかった。今後もバスケを続けるので、今日の悔しさを忘れず努力を続けたい」と、高校最後の大会を笑顔で締めくくった。
この敗戦を糧に再度全国を目指す別府溝部学園。県内での無敗記録は途絶えたが、負けて得るものもある。「人一倍負けず嫌いになってほしい」。末宗監督の言葉を胸に本当の強さを手に入れる戦いが始まる。
3年間主力としてチームを引っ張った島袋琉希
(黒木ゆか)
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