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珠算・電卓 全国初挑戦で読上算の頂点へ 川野隆哉(大分東明3年) 【大分県】

珠算・電卓 全国初挑戦で読上算の頂点へ 川野隆哉(大分東明3年) 【大分県】

 高い集中力と、自分を信じる強い精神力が求められる珠算・電卓の世界。今夏、横浜武道館(神奈川県)で行われた「第72回全国高校ビジネス計算競技大会」で、電卓競技の種目「読上算」で日本一に輝いたのが大分東明の川野隆哉(3年)である。読上算とは、読み上げられる数字を瞬時に聞き取り、電卓に打ち込み解答を導く競技だ。会場では緊張で指が震えたが、川野は心を鎮め、目の前の問題に集中した。

 大会には全国から予選を勝ち抜いた463人が出場。川野は初出場ながら頂点に立った。だが、その道のりは平坦ではなかった。幼い頃からそろばんを習っていたが、高校入学後は成績が伸びず、昨年は県予選で後輩に負けて九州大会すら逃した。「このまま続けても意味がないのでは」と悩み、競技から離れることも考えたという。

読上算で日本一になった川野

 そんなとき声をかけたのが顧問の竹島広道教諭だった。「川野は耳で数字を聞き取る力が強い。読上算で才能を生かせるはずだ」と電卓への転向を勧めた。最初はキーの配置に戸惑ったが、次第に手応えを感じ、再び計算の楽しさを取り戻した。今年の県大会では読上算と応用計算の両方で優勝し、団体・個人総合でも頂点に立った。続く九州大会でも読上算で優勝し、応用計算は優秀賞。昨年の悔しさを力に変えた結果だった。

 もう一つ、大きな転機があった。3月に卒業した先輩・久保田修平が全国大会3連覇を達成した姿を現地で見たことだ。「自分もやればできるかもしれない。同じ舞台に立ちたい」と強く誓い、再挑戦への決意が固まった。転向からわずか1年で全国の頂点に立てたのは、あの時の衝撃と憧れが原動力だったという。表彰式では、会場に駆けつけた久保田に優勝を報告でき、最高の恩返しになった。

 日々の練習は簡単ではなかった。記録が伸びず心が折れそうな時も、仲間たちの励ましが支えになった。「県予選で結果が出なかったときも、練習がつらいときも、仲間の言葉に救われた。みんながいなければ今の自分はない」。切磋琢磨した時間が、今回の栄冠を形づくった。

仲間たちの励ましが支えになった

 「珠算の魅力は達成感。正確さを磨き、少しずつレベルを上げて結果が出たときは本当にうれしい」。今も大会では緊張で指が震えるというが、3年間で培った技術と精神力は揺るがない。川野は将来、会計や金融など計算力を生かせる道を志している。「努力とあきらめない気持ちは、これからの人生の大きな力になる」と語った。

(塩月なつみ)