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大分トリニータ 未来を見据える野村直輝の視線 【大分県】

大分トリニータ 未来を見据える野村直輝の視線 【大分県】

 7月末のトレーニングマッチで負傷し、戦列を離れていた大分トリニータの野村直輝が、7試合ぶりにピッチへ戻ってきた。まだ痛みを抱え、本調子には遠い。それでも、復帰戦となった30節の山口戦で野村が放った存在感は確かなものだった。13試合ぶりの勝利を手繰り寄せたチームにとって、野村の復活は何よりの朗報だった。

 山口戦では後半23分から出場。与えられたポジションは本来のトップ下ではなくボランチ。復帰直後のコンディションを考慮して竹中穣監督が下した判断だった。「トップ下では360度からのプレッシャーを受ける。まずはボランチで前を向いて感覚を取り戻してほしかった」と語る。狙いは的中した。野村のキープ力によってマイボールの時間が増え、攻撃に厚みが出た。それまでカウンター頼みだった展開から、意図的にパスをつないで相手陣へ進めるようになったのだ。

 野村自身も役割を割り切っていた。「もう少しボールを持てると思ったが、思った以上に割り切らなければならなかった。だから守備に徹し、体を張ることだけを考えた」。試合中は小酒井新大ら途中出場の選手と声を掛け合い、最後まで全員で守り切る姿勢を貫いた。13試合ぶりの白星は、その献身の先にあった。

7試合ぶりにピッチに復帰した野村

 野村の視線はすでに先を見ている。「クリアで逃げるだけでは未来につながらない。相手をかわして前進することが必要だ」。残留争いの現実を直視しながらも、勝利と同時にクラブの成長を求める姿勢を崩さない。短期的な結果と長期的な発展、その両立を意識する発言はベテランらしい重みを持つ。

 竹中監督に代わってからのチームについても「やろうとしていることは間違っていない。修正点を明確にしてくれるし、選手とのコミュニケーションも積極的だ」と評価する。リーグ序盤戦、野村は「このままではかみ合わない」と感じ、チームを代表してシステム変更を直談判した。その意見を受け止め、柔軟に修正してくれたのが竹中監督だった。選手の感覚を理解しようとする姿勢があるからこそ、野村と竹中監督の絆は深い。いま、その信頼関係が再びチームの原動力になっている。

 山口戦で際立ったのは「体を張る」という共通意識だった。野村は「ベテランが体を張る姿を見せることで、チーム全体にエネルギーが伝染する」と語る。実際、最後の局面で全員が失点を拒む強烈な意志を共有した。勝利の裏には、その伝染力があったと言っていい。

 次節も残留争いの渦中にある愛媛との一戦を控える。野村は「守備を徹底するのは前提。そのうえで、奪った後にリスクを負ってでも攻めるチャレンジをしていきたい」と先頭に立つ覚悟を示す。野村が放つエネルギーはチームの方向性を変える力を秘めている。苦境にあるトリニータにとって、野村の復帰は単なる戦力回復ではなく、未来を切り拓く希望の光なのである。

「チームにエネルギーを伝染させたい」と語った

(柚野真也)

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