
全国高校サッカー選手権県予選特集 (1)大分鶴崎 経験値と総合力で連覇を狙う 【大分県】
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今月5日、大分トリニータはDF岡本拓也の加入を発表した。33歳のベテランは浦和レッズのユースからトップチームへ昇格後、V・ファーレン長崎、湘南ベルマーレと渡り歩き、今季はオーストラリア1部のパース・グローリーFCでプレーした。海外挑戦を経て、約7カ月ぶりにJリーグの舞台へ戻ってきた男は「流れを変えられる存在」であることを誓う。
大分に到着して数日。岡本は「みんな温かく迎えてくれた。街もきれいで、サッカーに集中できる」と新天地への手応えを語る。梅崎司や下田北斗ら、かつて大分でプレーした旧知の仲間たちから事前に話を聞いていたこともあり、違和感なく環境に溶け込んだ。若手主体のチームに対しても「まだ誰が何歳か把握しきれていないが、これから密にコミュニケーションを取っていきたい」と自然体で構える。
加入のタイミングは、残り10試合というシーズン終盤の厳しい局面だ。即戦力として求められる立場を、岡本は冷静に受け止める。「獲得してよかったと思ってもらえるように、日々の取り組みと試合の結果でチームに良い影響を与えたい」。合流直後のトレーニングマッチでは、慣れない3バック中央を任されたが、準備を怠らず前向きに取り組んだ。「新しいポジションに伸びしろを感じている」と挑戦心を隠さない。
コンディションは帰国後も他クラブでの練習で積み上げていたため大きな不安はないという。ただし「公式戦から離れていた分、試合を重ねて勘を取り戻す必要がある」と自己分析も忘れない。守備面の安定を欠き、得点力不足に悩むチームの現状については「守備と攻撃は表裏一体。いい守備が攻撃につながり、いい攻撃が守備につながる。一つ一つのディテールにこだわることが大事」と持論を展開した。経験に裏打ちされた言葉は重い。
さらに自身の強みとして「前向きなエネルギーを出すこと。後ろから安心感を与える存在でいたい」と強調する。キャリアを通じて培った統率力とコーチングの声は、大分の守備陣に欠けていた要素である。
吉岡宗重スポーツダイレクターは、補強の経緯をこう明かす。藤原優大のレンタルバックが決まり、センターバックの補強が急務となった。「若手を育成型で取るよりも、この状況では経験値と雰囲気づくりができる選手が必要だった」と即断。9月1日からの練習参加で、岡本が誰よりも声を出し、チームを鼓舞する姿を目の当たりにし「今のチームに絶対必要」と確信したという。起用は藤原が抜けた3バック中央を想定。右サイドが本職の岡本だが、判断力と統率力で中央を担う適性を評価した。
残留を目指す大分にとって、一戦必勝の戦いは続く。修羅場をくぐり抜けてきたベテランの冷静さと熱量が、チームの命運を左右することになるだろう。
(柚野真也)
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