
全国高校総体 剣道男子 明豊の勝利の方程式崩れ、涙の準優勝 【大分県】
剣道
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中学時代に「鶴崎に入学して全国上位を目指そう」と誓い合った仲間たちが、その約束を果たした。全国高校総体の剣道女子団体で、大分鶴崎が3位タイに輝いた。昨年の全国高校総体、今春の全国選抜には明豊に次ぐ県2位で出場したが、一勝も挙げられなかった。悔しさを胸に挑んだ高校最後の夏、彼女たちはついに大きな花を咲かせた。
快進撃は県高校総体から始まった。絶対王者・明豊に初めて土をつけ、全国切符を手にしたのだ。不動の大将・薬師寺結美(3年)は「ずっと明豊に負け続けてきたので、チーム全員で徹底的に研究した。『ここを狙える』『こう攻めれば有効打になる』と共有し合い、5人だけでなく部員全員で一つの心になって戦った」と振り返る。実力差を埋めたのは、徹底した準備と結束力だった。
ただ、勝利の喜びは新たな重圧を生んだ。「明豊に勝てたのだから、全国でも日本一を狙えるのではないか」という期待が、無意識のうちに選手たちを縛った。九州大会ではその重さに押され、本来の粘り強い剣道を見失った。姫野翔監督も「勝たなければいけないという思いが強すぎて、打ち急ぐことが多かった」と語る。
しかし、全国総体直前の玉竜旗大会でベスト16入りを果たしたことで、肩の力が抜けた。「一戦一戦を全力で戦った結果が次につながる」と意識を切り替え、ようやく目の前の一本に集中できるようになった。全国総体では、予選リーグこそ接戦続きで重苦しい空気が漂ったが、粘り強く勝ち抜いたことで、チームの結束はさらに強まった。
決勝トーナメント初戦の金沢(石川)戦。先鋒が先制を許し、ベンチには一瞬、緊張が走った。だが「ここで崩れてはいけない」と互いに声を掛け合い、次鋒、中堅がポイントを与えずにつなぐ。副将の波多野惺菜(せな、2年)が気迫の一太刀で流れを取り戻し、薬師寺に勝負を託した。勝敗の重みを背負って立った薬師寺は「自分がやらなければ終わる」と覚悟を込めた。最後は気迫で押し切るように一本を奪い、逆転勝利した。
勢いそのままに挑んだ準々決勝の淑徳巣鴨(東京)戦は、将戦までもつれる死闘。本数差で勝利し準決勝に駒を進めたが、ここで力尽きた。薬師寺は「3年間やってきたことをすべて出し切れた」と胸を張り、悔しさよりもすがすがしさを感じさせた。
姫野監督は「目標は8強入りだった。それを上回る成績を残せたのは結束力の強さ」と称えた。粘り強さと仲間を信じる心。それが、全国の大舞台で実を結んだ。
副将の波多野は「どんなときも明るく、前向きに戦う先輩の姿勢を受け継ぎたい。これを鶴崎の伝統にしたい」と誓う。3年生が残した集大成の戦いは、新チームへと確かに受け継がれていく。
(柚野真也)
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