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3年生、夏物語 放送部 声に思いを乗せた3年間 【大分県】

3年生、夏物語 放送部 声に思いを乗せた3年間 【大分県】

 幼い頃、大好きなアニメの声優に憧れた別府鶴見丘高校放送部の田中梨菜(3年)は、高校入学と同時に放送部へ入部した。経験はほぼゼロ。それでも学びを重ねるうち、声を届ける喜びが形となって表れた。3年間、努力を積み重ね、全国の舞台で輝いた田中は、達成感に包まれている。

数々の賞を受賞した

 元来は引っ込み思案で、人を支える立場に心地よさを感じていた。しかし、大会で結果を出すたびに、放送の魅力と「伝えることの楽しさ」に気づき、前に立つ覚悟が芽生えた。発声を安定させ喉への負担を減らすため、部活後も自宅で腹回りの筋肉を鍛えるトレーニングを継続。そこには、受賞のたびに喜ぶ母に応えたいという思いがあった。

 1年時、入部から半年足らずで挑んだ「第45回全国高校放送コンテストNHK杯大分県大会」アナウンス部門で優良賞を受賞。さらに「九州高校放送コンテスト」でも上位入賞を果たし、翌年の「第48回全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)」出場権を得た。

 2年時の清流の国ぎふ総文では、放送・朗読部門で優秀賞を獲得した。題材は、日本初の女性バスガイドを描いたミュージカルの取材原稿。七五調の案内文を組み込み、聞き手に情景を鮮やかに浮かび上がらせるような構成で観客を引き込んだ。顧問の村上聡子教諭は「声の張りと厚み、本番の強さ、意図を的確に表現できる」と高く評価する。田中も「村上先生の指導で文章の解釈や表現の幅を広げられた」と感謝を口にする。

 3年時、迎えた最後の舞台「第49回全国高等学校総合文化祭(かがわ総文祭2025)」では、放送・朗読部門で優秀賞・文化庁長官賞を受賞した。朗読したのは、太平洋戦争で大分市に暮らし、空襲で亡くなった少女ムッちゃんの物語だった。「彼女の孤独や悲しみ、作者の切実な思いをどうしても届けたかった」。緊張で呼吸が浅くならぬよう自らを制御し、感傷的な空気を壊さぬよう声に思いを込めた。

 3年間の部活動を締めくくった田中は「日常の言葉遣いや音の選び方一つで、感情の伝わり方は変わる。それは人としての財産。これからも生かしていきたい」と笑顔で語った。

チームワーク抜群の放送部。互いに切磋琢磨して技術を磨いた

(塩月なつみ)