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書道 繊細さを力に筆先に宿る心 後藤明依(大分南高3年) 【大分県】

書道 繊細さを力に筆先に宿る心 後藤明依(大分南高3年) 【大分県】

 国際高校生選抜書展「書の甲子園」で、2年連続全国準優勝を果たした大分南高校書道部。副部長の後藤明依(3年)は、部を支える中心人物の一人だ。

 幼い頃から書き方教室に通い、文字を書くことに喜びを見いだしていた後藤。高校入学と同時に書道部に入り、先輩たちの情熱に触れて「この部で頑張りたい」と感じたという。部の雰囲気は、楽しむ時と練習に打ち込む時のメリハリがあり、自然と努力を重ねられる環境だった。

 入部してすぐに臨んだ「大分県高文連席上揮毫(きごう)大会」で推奨を受賞。続く「書の甲子園」では、全国1万点以上の出展作の中で1〜2割弱ほどしか選ばれないとされる入選を果たす。1年生での快挙は周囲を驚かせた。2年次にも同大会で入選。さらに、「大分県高等学校文化連盟 中央展」では最優秀賞、「大分県高等学校競書展」では県議会議長賞(第2席)を受賞した。

これまで数々の受賞歴がある後藤明依

 これだけの実績を持ちながら、後藤には「まだ自分の書に自信が持てない」という葛藤があった。受賞という結果が出ても、心から納得できる作品を生み出せているという実感が持てなかったという。ほんのわずかなズレにも気づいてしまう繊細さが、逆に文字を書くリズムに迷いを生むこともあった。何枚書いても満足できず、筆を止めたまま時間だけが過ぎていく日もあった。

 そんな後藤の背中を優しく押してくれたのが、講師や先輩たちの存在だった。技術的な指導にとどまらず、「その一枚に、どんな思いを込めたいのか」と問いかけてくれるような言葉が、少しずつ心をほどいていった。「技術だけでなく、書に感情を込めること、そして真摯(しんし)に向き合う姿勢を学んだ」と後藤は語る。作品は心を映す鏡——そう気づいた時、自身の書にも少しずつ芯が通り始めた。

 また、挨拶(あいさつ)や礼儀、人との関わり方など、人として大切なこともこの部活動で得たものだという。作品を仕上げる過程には、他者への敬意や謙虚さがにじむ。書を学ぶことは、文字を通して自分自身を整えることでもあった。

 顧問の鹿苑晋史講師は、そんな後藤をこう評する。「精神面に課題はあるが、それを乗り越えればもっと高い舞台で戦える力がある。とはいえ、その繊細さこそが彼女の作品の魅力になっている」。柔らかく、細やかな筆致は、団体作品においても重要な存在感を放っている。

 3年生となった今、後藤は改めて自分の書と向き合っている。目指すは「書の甲子園」での団体優勝、そして個人では文部科学大臣賞の受賞だ。「自分にしか書けない文字を届けたい」。その思いを胸に筆に心を宿す。

仲間たちとの絆は大きな力になっている
「自分にしか書けない書」を目指す

(塩月なつみ)