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全国高校野球大分大会 グッドルーザー 日田林工の鼓動 敗れて見えたもの 【大分県】

全国高校野球大分大会 グッドルーザー 日田林工の鼓動 敗れて見えたもの 【大分県】

第107回全国高校野球大分大会
7月22日 別大興産スタジアム
準々決勝
日田林工 010 011 020|5
明 豊  101 020 31×|8

 日田林工は、5連覇を目指す明豊に対して真っ向から挑んだ。7年ぶりにつかんだ準々決勝の舞台。キャプテンの江田蒼翔ただ一人が3年生で、先発メンバーには2年生がずらりと並んだ。高山満也監督は「チーム内の競争の結果」と語り、年齢ではなく実力で勝ち取ったポジションであることを強調した。

キャプテンの江田蒼翔

 試合は序盤から激しい点の取り合いとなった。追いかける展開ながらも日田林工は食らいつき、2度同点に追いついた。六回には3番・大庭那祐太(2年)がレフト前へタイムリーを放ち、1点差に詰め寄ったが勝負はそこまでだった。七回に突き放され、最後まで諦めずに追いすがったが、結果は5-8。甲子園常連校に力及ばなかった。

 それでも、エース跡田晄士(同)の投球は光っていた。強打を誇る明豊打線に対し、バックスピンのかかった伸びのあるストレートと緩急を生かした投球で凡打の山を築いた。「打たせて取るピッチングをしてくれた」と高山監督は称賛したが、同時に「だからこそ前半に失策なく守って、リズムをつくってやらなければいけなかった」と野手のほころびに悔しさをにじませた。三回二死からの守備のミスが失点を招き、流れを手放す一因となったのだ。試合後、高山監督は「積み重ねと積み残しの差が出た」と語った。それはつまり、明豊が日々の練習で丁寧に積み上げてきた基礎や精度が勝負どころで力を発揮し、逆に日田林工は積み上げ切れなかった“やり残し”が、ミスや詰めの甘さとして表面化したということ。見えない努力の差が、ここ一番の場面で明暗を分けた。

 打線は簡単に三振せず、追い込まれても必死にバットを振り、何とかつないで粘りを見せた。だが、ここまで打線の中軸を担ってきた岐部瑠生(同)が要として機能しなかったことは、やはり痛かった。チャンスの場面でバットが空を切った。「狙い球の裏をかかれた。本当に悔しい」と、試合後の岐部は言葉少なに唇をかんだ。それでも、「来年こそ、チーム一丸となって、得点に結びつけたい」と前を向く。捕手としてエース跡田と1球ごとに向き合い、勝利を支えてきた岐部は、攻守両面での責任を痛感していたのだろう。悔しさを糧に、自分が変わらなければチームも変われない。そう強く心に刻むように、岐部の視線はすでに来季を見据えていた。

新チームの軸となる2年生バッテリー

 敗戦の痛みは深くても、その悔しさこそが、来年への原動力となるはずだ。主軸として注目を浴びた大庭も3安打2打点と意地をみせた。だが高山監督は、「岐部と大庭が目立っているチームではダメだ」と語る。全員が主役となり得るチームづくりこそ、次なる飛躍につながると説いた。

 敗れて強くなる。その姿は、まぎれもなく新チームへの希望だった。春夏通算6度の甲子園出場を誇る古豪・日田林工。その復活の足音は確かに聞こえている。

(柚野真也)