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全国高校野球大分大会 逆転の覇気宿る 大分商業の底力 【大分県】

全国高校野球大分大会 逆転の覇気宿る 大分商業の底力 【大分県】

第107回全国高校野球大分大会
7月15日 別大興産スタジアム
2回戦
大分商業 000 000 340|7
臼 杵  002 000 000|2

 雷雨により継続試合となった一戦で、大分商業が意地の逆転劇を演じた。臼杵との試合は三回裏、無死一、二塁のピンチから再開。いきなりフォアボールで満塁となり、先制・追加点を奪われ2点のビハインドを背負った。

 それでも第2シードの底力はここから発揮された。流れを変えたのは七回。フォアボールとヒットで一、三塁のチャンスをつくると、打席には6番・石田虎之介(3年)が立った。前日の試合ではスクイズ失敗に加え、ここまで2三振。だが、「これ以上悪くなることはない」と開き直り、アウトコース高めを逆らわず打ち返した打球はセンターの頭上を越える同点タイムリーとなった。「自分が決めるという思いだけだった」と石田は振り返る。帽子のツバの裏には、仲間が記した「覇気」の二文字が力強く刻まれていた。「相手を圧倒するんだ」という思いを胸に振り抜いた一撃が、試合の流れを一変させた。

同点打を放った石田虎之介

 続く場面でも攻めの姿勢は崩さなかった。1死一、三塁からセーフティーバントで相手バッテリーを揺さぶると、二塁送球が乱れ逆転に成功。八回にはさらに4点を加え、終わってみれば7-2。前日の嫌なムードを吹き飛ばし、3回戦進出を決めた。

 那賀誠監督は「石田の同点打は涙が出た」と素直な感情を口にした。前日のスクイズ失敗で肩を落としていた石田に「昨日のことは引きずるな、暗い顔をするな」と声をかけたものの、監督自身も眠れぬ夜を過ごした。「今まで一睡もしないまま試合に臨んだことはなかった」と明かすように、絶好の場面でミスをした石田の顔が頭から離れなかったという。試合当日の朝、石田の姿を見つけてようやくかけた言葉だった。その苦しみの中で迎えた七回、力んでいた石田に「逆方向を狙え、リラックスしろ」と送り出し、結果は見事なセンターオーバー。同点の瞬間、監督の目にも涙がにじんだ。「本当にしんどい場面だった。でも、あの一撃は成長の証。石田の野球人生においても忘れられない打席になる」と目を細めた。

 主将の黒石優多(3年)は、左手親指の靭帯損傷を抱えながらフル出場した。「2年半の積み上げが結果に出た」と胸を張った。沖縄から家族と共に大分へ移り、大分商業の「泥臭い野球」に引かれたキャプテンは、「昨日は暗い雰囲気だったが、今日の継続試合で気持ちを切り替えた。一戦必勝で戦うだけ。甲子園に必ず行く」と力強く誓った。

チームを引っ張るキャプテンの黒石優多

(柚野真也)