
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
「大分から世界に通用するボクサーを輩出しよう」と掲げて5年。地に足を着けた堅実な強化に励んできた。小学生、中学生の育成年代強化の重要性にいち早く気付き、「根性で勝てる時代は終わった。気持ちだけでは技術に追いつかない。今のボクシングは他のスポーツと同様に早い段階からボクシングを始めないと勝てない。県内の高校には素晴らしい指導者がいるので、自分は中学までボクシングのイロハを教えてバトンを渡したい」と語るのは、abox〜Akamine Fitness Boxing Gym〜の赤峰大士会長だ。
赤峰会長は高校からボクシングを始め、大分県代表として全国高校総体に出場し、大分からプロデビューを果たした経験を持つ。10年間プロの世界で活躍し、引退後は同年代の選手がボクシングの発展のためにジムを開設したことに刺激を受け、「ボクシングで地元に恩返しをしたい」と、メキシコ五輪に出場した実績を持つ恩師・中村哲明らとともに5年前にジムを立ち上げた。「最初は10人ぐらいしかいなかったが、体験会を開き、育成年代の普及を図った」(赤峰会長)。
地道に種をまき、水をやり、雑草を引き抜きながら、大事に芽を育ててきた。ここ1、2年で全国大会に出場する選手を輩出し、今年3月に石川県である「第9回全日本U Jボクシング大会」に2人選手が出場することが決まった。赤峰会長は「ボクシングは努力しないと報われない。個人スポーツだからこそ本人がやるしかない。練習したら練習しただけ勝つ可能性は大きくなる。分かりやすいスポーツだからやり甲斐がある」と、ジムに通う練習生に何度も繰り返し言ってきた。そのことを考えると、良かったなあ、努力は嘘をつかないんだ、と素直に実感するのである。
ジム内は熱気があふれる
ムエタイからボクシングに転向した小松大和(豊岡小6年)は、努力が実り、全国大会への出場を手にした。兄の後を追い、ムエタイ、ボクシングを始めた。勝つことの喜びを知り、「もっと強くなりたい」と週3、4度ジムに通い、フットワークと得意のストレートに磨きをかける。3人兄弟の2番目、受け身で気持ちを前に出す性格ではなかったが、最近は繰り出すパンチに魂が宿る。「全国大会は小学生最後の大会なんで勝って終わりたい。中学になったらコンビネーションを覚えて、もっと強くなりたい」と話す。
ムエタイとボクシングを両立する中家翔寿(大在小5年)も全国大会の切符を手にした。「(ムエタイの)パンチを磨くためにボクシングを始めた」のがきっかけだが、今はボクシングに重心を置きつつある。小学5年ながらすでにムエタイでは40戦以上戦っており、3本のチャンピオンベルトを持つ。身体能力が高く、今後は「ボクシングでチャンピオンになりたい」と話す中家を、赤峰会長は「強くなりたいと思う子に対しては、強くさせる責任が自分たちにはある」と真正面から向かい合い、本気で世界への道筋を企てる。選手たちが日に日にレベルアップを遂げるaboxから、多くのプロ選手が生まれるようになるまで、そう時間はかからないかもしれない。
小中学・高校と育成強化が実りつつある
(柚野真也)
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