
県高校総体 バレーボール男子 仲間との絆で栄冠をつかんだ大分南 【大分県】
バレー
3度目の正直―。春の高校バレーで8年ぶり7度目の優勝を飾った東九州龍谷(東龍)のキャプテン荒木彩花(3年)が、何度も言い続けた言葉だ。1年の頃から憧れのセンターコートに立ち、尊敬する先輩たちが2度も決勝で敗れ、涙する場面を見てきた。「3度目の正直が言葉通りになるように声に出し、意識づけした」。圧倒的な正義感と自分の選んだ道を信じ、突き進む強さが荒木にはある。
最終学年となりキャプテンを任されたのが昨年の春の高校バレーが終わった直後のこと。「あの先輩たちが成し遂げることができなかった日本一を取ることができるのか」と不安に思った。それでも「先輩たちの悔しさを晴らすのは私たちしかできないこと」と腹をくくった。新チーム発足当初はまとまりに欠け、緊張感もなかった。さらに3月にこれまで長年チームを率いた相原昇監督の退任が決まり、選手に動揺が走る。コーチから新監督となった竹内誠二監督から「これまでやってきたバレーを継続する。何も変える必要はない」と言われ、自分のプレーに集中することを心がけた。
4月になり新1年生が加わり、選手層の厚みは増したが、やはり一体感に欠けた。「みんな仲は良かったが厳しさがなかった」(荒木)。不安を抱えながら7月には女子U-20世界選手権(メキシコ)に出場する日本代表に選出され、約1カ月チームを離れる。代表での活動は刺激的だった。「当然だけどレベルが高い。そんな選手たちが死に物狂いで優勝を目指す。そこが衝撃的だった」。荒木は、実業団でプレーする上の年代の選手とコートに立っても物おじすることなく、流れを変えるブロッカーとして活躍し、世界一に貢献した。身長184㌢の高さと、各国エースのスパイクに屈しないパワーとスピードを示した。「東龍でやってきたことが通用した」ことがうれしかった。
U-20日本代表としても活躍した荒木彩花
確かな手応えと自信を手にしたが、帰国直後の全国高校総体で準々決勝敗退。立派な成績ではあるが日本一を宿命づけられた東龍においてふがいなさだけが残った。「技術うんぬんの問題ではない。勝ちたい気持ちが足りなかった。3年生がもっと引っ張らなければいけない」。敗戦直後、温厚な荒木が怒りをあらわにした。その日から荒木は変わった。マネージャーの古賀結衣(3年)は、「まとまらないチームを率先して引っ張ってくれた。プレーだけでなく、強い言葉で厳しく接した。嫌われ役になってもチームが勝てばいいという思いがあった。この1年で一番変わったのは彩花だった」と振り返る。日本一になるために本気の挑戦がはじまった。
チームは1年生がコートに立つ時間が長く、経験不足は否めなかったが、荒木は下級生に対して、「ミスを恐れなくていい。私がカバーするから思い切りプレーしていいよ」と優しく声をかけ、同級生に対しては「コートに立てなくてもできることはある。私たち3年10人で盛り上げていこう」と呼びかけた。荒木の強いリーダーシップがチームを“ワンチーム”にした。目指す方向が一致すれば強い。秋の茨城国体では宿敵・金蘭会が主体となる大阪代表に勝利し、準優勝。あと一歩及ばなかったことが春の高校バレーでの快進撃につながった。「日本一になる最後のチャンス。負けるわけにはいかない」。強い思いは初戦から決勝までの5試合、途切れることはなかった。全速力で駆け上がった優勝。荒木は「みんなで勝ち取った日本一。最強のチームです」と胸を張った。
最高の形で高校バレーの幕を閉じた荒木は、卒業後は実業団チームでプレーする。「全日本を目指したい。自分からアピールするのではなく、代表に呼びたくなる選手になりたい」。絶大な存在感を世界に示す戦いがはじまる。
優勝を決めた瞬間、喜びを爆発させた
(柚野真也)
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