
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
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中学の頃から何度も日本一に輝き、国際大会への出場経験も持つ米光陸。2020年の東京オリンピック出場はかなわなかったが、その目は依然世界を見据えている。今後日本カヌー界の未来を背負って立つ可能性を秘めたホープに、高校3年間の思い出や今後の目標を聞いた。
Q:高校3年間を振り返って。
高木宏通先生の指導を受け、全国トップクラスのチームメートと切磋琢磨し、大きく成長できた3年間でした。一番変わったのは、考えながら練習するようになったことです。中学まではただがむしゃらに練習するだけで結果が出ていたし、高校年代の大会で優勝した経験もあったので「自分なら高校でも大丈夫だろう」と変な自信を持っていました。でも入学するとなかなか思うような結果が出なかった。がむしゃらに頑張るだけではダメなんだと思い知りました。そこから先生に教わりながら“考えること”を徹底しました。全力でこぐだけでなく、どういう形でこいでいるのか、1本目と2本目の力配分をどうするかなど、常に考えながら練習に取り組むことで課題が明確になり、全国で通用する力を身に付けることができました。
Q:ターニングポイントといえる出来事はありましたか?
高木先生との出会いです。考えながら練習に取り組むことなど、本当にたくさんのことを教えてもらいました。中学の頃の練習方法を続けていたら今の自分はなかったかもしれません。それに精神面でも大きな支えになってくれました。レース前、緊張してガチガチに固まっているとき、先生の「お前なら勝てる」という言葉にどれだけ勇気づけられたか。練習中は厳しいことも山ほどいわれましたが、本当に自分を思ってくれていることが伝わってきたので、その思いに応えようと奮起できました。学校生活のこと、進学について、カヌー以外のこともたくさん相談にのってもらい、頼りっぱなしの3年間だったという感じです。高木先生に自立した姿を見せ、安心してもらうためにも大学でいい成績を残したいです。
Q:自分をどう分析していますか?
ものすごい負けず嫌いです。試合はもちろん、友達とゲームをしていても熱くなることが多いですね。その性格が「絶対に勝つ」というモチベーションにつながっていると思います。他にはめちゃくちゃビビりです(笑)。大会前はいつも「負けたらどうしよう」と怖くて仕方ありません。過去の失敗がずっと頭から離れず、決勝前はいつもガタガタ震えながら泣いています。スポーツ選手に全く向いていないメンタルなんです。でも高木先生は「だからお前は強くなれたんだ。常に怖がっているからその気持ちを克服するために誰よりも練習する。慢心がないから手を抜くこともない」といってくれました。臆病な性格はこのままでいいと思っています。泣くのはやめたいですけど(笑)。
Q:高校3年間で印象に残っているレースはありますか?
高校3年のときの茨城国体のカナディアンシングル200㍍決勝です。優勝を目指していましたが、スタートがうまくいかず2位でした。レース後、高木先生に「ごめんな」と謝らせてしまって…。それがずっと心に引っかかっています。先生はレース直前にスタートが苦手な自分に助言してくれることが多いんですが、そのときはたまたまその助言がなかったんです。だから責任を感じて無意識に「ごめんな」という言葉が出たんだと思います。負けたこと以上に、3年間お世話になりっぱなしだった先生に謝らせてしまったことが情けなくて、悔しくて思い出すと今でも泣きそうになります。いい成績を残して「ごめんな」を「ありがとう」に変えたいです。
Q:卒業後の進路は?
立命館大学に進学してカヌーを続けます。大分を離れますが自分の原点はここ豊後高田。大学で練習メニューが変わっても、高木先生に教わったことを忘れずに進化していきたいです。
Q:今後の目標は?
直近の目標は来年の国体に出場してカナディアンシングル200㍍、500㍍で優勝すること。結果を出して大分県に貢献したいです。将来の目標はもちろんオリンピック出場です。2020年の東京がダメだったので、2024年のパリ、2028年のロサンゼルスを目指しています。自分はジュニアではトップレベルにいますが、シニアではまだ決勝に上がることもできない実力です。大学で自分を見つめ直し、まずは日本代表になれるよう、努力を続けたいと思っています。
恩師との出会いが成長につながった
(甲斐理恵)
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