大分上野丘高校ラグビー部 佐藤武信(3年) file.827
ラグビー
全国高校ラグビー大会 初舞台も気負わず楽しむ大分東明
全国大会に向けての3つのテーマ
①エンジョイラグビー
②自立したプレー
③感謝
今年は大分東明の躍進によって、県内の高校ラグビー界が大きく動いた1年だった。2月の県高校新人大会では大分舞鶴に36-5と大差で勝利し、2強時代の到来を印象付けた。6月の県高校総体は2点差で敗れはしたが互角以上の戦いぶりを見せ、会場を沸かせた。そして満を持して臨んだ11月の全国高校ラグビー大会県予選決勝では17-14、1PG差で逃げ切り、悲願の花園初出場を勝ち取った。同大会で大分舞鶴が敗れたのは1985年以来のこと。新たな歴史が刻まれた瞬間だった。
白田誠明監督が赴任して以来、大分東明が掲げてきたのはエンジョイラグビー。大分舞鶴OBの白田監督が、現役や母校のコーチ時代に大分舞鶴のストイックに突き詰めるラグビーを知ったから生まれたコンセプトであり、大分東明の躍進の原動力といえる。「ラグビーが好き」、「ラグビーを楽しみたい」、「好きだから負けたくない」、「支えてくれる人に笑顔になってほしい」。そんな純粋さ、ポジティブさ、相手を意識せず自分たちに焦点を当てた考え方は、時に信じられないほど大きな力を生んできた。
2年前にフィジーから2人の留学生を迎えたことでエンジョイラグビーはさらに進化を遂げた。「留学生2人の前向きさ、チャレンジ精神、明るさに多くの刺激をもらった」(白田監督)。もちろん留学生も日本での規律やルールを学び、一回りも二回りも成長。お互いに刺激し合う関係が、大分東明の成長を加速させたことは間違いない。
自分たちで考えながら動く、自立したプレーも東明ラグビーの特徴の一つだ。「全てを型にはめてしまえば、はまった時は強いが、はまらなかったときに一気に崩れる」(白田監督)。だからこそ、選手たちは拮抗した試合の中でも状況を見ながら、一人一人が「どうするべきなのか」を考え、冷静に対処する。大分東明が試合のたびに進化を遂げる「成長軍団」と呼ばれるゆえんの一つだろう。そして監督、選手の心の中にはいつも感謝がある。自分のためではなく、大切な誰かのために。「One for All, All for One」。それはまさにラグビー精神そのものといえる。
選手たちは「全国で勝つためには全ての面で力の底上げが必要」と全国へ向けての課題を口にするが、プレッシャーや気負いは感じていないと口をそろえる。「大分代表として、そして舞鶴のためにもいいプレーを見せたい」。その言葉には並々ならぬ覚悟がみなぎっている。試合のたびに大きく成長していく大分東明。花園という初の大舞台でどんな戦いを見せてくれるのか、どんな成長を遂げるのか。期待が高まる。
大分東明のエンジョイラグビーで旋風を巻き起こす
県予選MIP
冨田大智(3年)
フッカー、2001年11月9日生まれ、165cm、92kg、碩田中学校出身
大分東明ラグビー部の“頭脳”。「プレーの方向性を決めたり、体を張ったり必要なところで必ず必要なプレーをしてくれる」と白田監督の信頼も厚い。
全国高校ラグビー県予選決勝では、後半10分、強烈なタックルを受けながらもオフロードパスをつなぎ、逆転トライをサポート。勝利に貢献し、会場を沸かせた。2月の県高校新人大会、6月の県高校総体でも抜きん出た活躍を見せ、大きな存在感を示した。
ラグビーを始めたのは小学4年の頃から。大分舞鶴への進学も考えたが、「見学に行ったときに自分には合わないと感じた。このチームを倒せるチームに入りたいと思った」と大分東明を選んだ。
当時から大きな目標だったという花園出場。「自分は身長が高くない。でもボールへの嗅覚は鋭いと思っている。ラックからのジャッカルや低いタックルでチームに貢献したい」と闘志を燃やしている。
将来は日本代表を目指したいという冨田。まずは花園に大きな爪痕を残すことが目標だ。
(甲斐理恵)