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TURNING POINT 〜つきぬけた瞬間〜 #06 「カヌーと出合い人生が大きく変わった」(森田考博・豊後木材市場)

TURNING POINT 〜つきぬけた瞬間〜 #06 「カヌーと出合い人生が大きく変わった」(森田考博・豊後木材市場)

 丸めた頭に強い気持ちを感じる。茨城国体の成年男子カナディアンシングルに出場する森田考博(豊後木材市場)は、2年ぶりの優勝を目指し邁進中だ。国体前の最後の大会となる「日本カヌースプリント選手権大会」に出場し、500㍍で8位となった。「調子は徐々に上がっている。国体までにスタートなど課題を修正したい」と語った。

 

 森田にとって国体は「恩返しの場」だ。昨年の福井国体では200㍍で準優勝するも、500㍍は決勝に進めなかった。「悔しさしか残らなかった。茨城国体では1点でも多く結果を残し、チーム大分に貢献したい」と強い決意を口にした。あれから1年、ストイックに己と向き合い、下半身を強化し、パワーアップした。それは筋肉の鎧を身につけたような姿を見れば分かる。

 

 楊志館高校でカヌーと出合い、「人生が大きく変わった」と森田。これこそが森田のターニングポイントだ。中学まで野球少年だったが、パドルで水面をかき、味わったことのないスピード感に魅了された。監督や先輩に「筋がいい」と褒められ、単純明快な男はすぐにその気になった。翌日には「目標は日本一」と豪語し、厳しい練習にも弱音を吐くことなく一心不乱にこぎ続けた。そして、今もあの頃と同じ気持ちで艇に乗る。

 

 高校3年時に北部九州インターハイ200㍍で優勝し、大正大学進学後は2016年日本選手権200㍍優勝、2017年には全日本学生カヌー選手権200㍍優勝、同年の国体成年の部200㍍優勝。数々の優勝を手にし、昨年4月に日本オリンピック委員会(JOC)が実施するトップアスリートの就職支援ナビゲーション「アスナビ」を活用し、生まれ育った大分で競技を続けることを決めた。

 

国体に照準を合わせ調整は続く

 

 決して練習環境が整っているわけではない。指導者もいなければ、練習相手もいない。「仕事をしながら競技を続ける難しさを感じた」(森田)。平日は仕事を終え、自分で考えた練習メニューを課し、黙々とこぎ続ける。土・日曜、祝日は一日中練習に時間を割く。「愚直で真面目。あんなに練習する奴はいない」とは高田高校の高木宏通監督。森田がカヌーを初めた頃を知る指導者の一人だ。「センスより努力ではい上がった選手。あの筋肉を見れば分かる」。県カヌー協会の合宿や合同練習で会うたびに体が大きくなる姿を見てきた。

 

 森田の爆発的なスピードは、バランス感覚と体幹の強さを支える下半身が源となっている。しかし、森田の武器は「カヌーを突き詰める追求心」にある。指導する者もいなければ、管理する者もいない。孤独な戦いは続くが、「自分にはカヌーしかない」と一点の曇りもなく練習に突き込む姿は修行僧のようだ。

 

 そんな森田に目標を聞くと「カヌーで自分は人生が変わった。これまでお世話になった方々のために恩返しをしたい」と答えた。国際大会や五輪出場という目標もあるが、一番は恩返し。そのために国体を森田にとって最も重要な大会と位置付けている。「結果を出すことでカヌーの注目度が高まり、普及、育成にも弾みがつく」。10月4日から始まる茨城国体では2度目の優勝を目指す。

 

カヌーで地元に恩返しをしたいと語る森田考博

 

(柚野真也)