
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
かつて大分をカヌー王国に育て上げた元大分舞鶴高校教諭の堀田育子さんの意志を受け継ぎ、今も多くの日本代表選手や国際大会に出場する人材を輩出する「大分市高等学校カヌー部」。国体で大分を5度の競技別総合優勝に導いた名伯楽のレガシーであり、普及と強化を目的に30年以上も続いている。
現在は大分舞鶴や大分豊府のカヌー部を中心に、情報科学や大分鶴崎、楊志館の5校の1、2年生26人が日本一を目指して合同で練習している。大分舞鶴の足立和宏監督は「学校の垣根を越えてオール大分として強化している。それぞれの学校の考えや活動時間などが異なり調整は難しいが、カヌーをしたい選手の受け皿になればいい」と来る者を拒まない。茨城国体に出場する少年女子カヤックシングルの大島沙耶佳は情報科学の唯一の選手。中学3年のときにカヌーに出合い、入学先にカヌー部がなくても競技を続けられることを知った。「学校が違っても同じ環境で練習ができ、指導してもらえる。学校以外で友達もできて楽しい」と充実した毎日を過ごす。
丁寧な指導で個性を引き出す
指導者は足立監督の他に2人。メガホン片手に自転車に乗り、練習場所の大分川を往復しながら艇(てい)を追い指示を出す。ここにいる選手は高校からカヌーを始めた者ばかり。パドルの持ち方からこぎ方まで丁寧に教え、一人前の選手になるまで手塩にかけて育てる。毎年のように全国大会での上位入賞者を輩出しているが、いろんなことを捨ててまで勝利を追求するのかといえば、そんなことはない。選手たちが大会で勝ちたいと思うのは当たり前。指導者は勝つことから逆算して何が必要なのかというアプローチをする。「選手は一人一人特徴が違い、得意なものも違う。最終的には選手のストロングポイントを引き出したいと思っている」と足立監督。
一人一人の個性を引き出す指導が貫かれている。足立監督自身、堀田さんに同じように指導を受け、能力を開花させた選手の一人だ。堀田さんの指導を受けてカヌーを始め、選手として活躍し、そしてまた指導者として大分に戻って来る。このサイクルが3度続けば「カヌー王国として定着できる」と堀田さんはかつて語っていた。いうなれば足立監督は第2世代で、教え子が第3世代となる。「結果を残すことで次につながる」。脈々と受け継がれた勝者のメンタリティーは今も変わらない。大分市高等学校カヌー部の選手はのびのびと成長を重ね、強くなっている。
カヌー王国を担う逸材たち
(柚野真也)
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