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トリニータ 後半戦の注目選手① 全国に名を知らしめた藤本憲明

トリニータ 後半戦の注目選手① 全国に名を知らしめた藤本憲明

大分合同新聞社サンクスデー企画(1)

 

 リーグ後半戦は黒星スタートとなった大分トリニータだが、J1昇格の年に8勝5分5敗、勝点29で暫定5位と好位置にいる。チームを率いて4年目の片野坂知宏監督が積み上げてきた、GKを含めた低い位置からひるまずに試合を組み立てるスタイルが成熟している。ミスでひやりとする場面もあるが、丁寧なパスをベースにした主導権を握るサッカーを後半戦も続けている。

 今節はホームで札幌を迎える「大分合同新聞社サンクスデー」。オー!エス!OITA SPORTS企画として、攻守のキープレーヤーを取り上げる。

 

 快進撃の原動力の一人はFW藤本憲明でまちがいない。ここまでJ1日本人選手最高の8得点を挙げる活躍。相手の厳しいマークで序盤戦のように大量得点するシーンは少なくなったが、その実力は本物。西山哲平強化部長は「彼の得点感覚にカテゴリーは関係ない。身体能力、判断の質の高いJ1の守備陣との競り合いに慣れるまで時間がかかると思っていたが、駆け引きがうまく、すぐに対応できた」ことが好調の要因と話す。

 

 昨季から大分に加わり、チーム最多タイの12得点を決めたストライカーは、アマチュアリーグのJFLから各カテゴリーでブレイクしており、ほぼ毎年、確率変動で興奮をもたらしてくれる。今季も開幕戦でアジア王者・鹿島を相手に2得点決め、衝撃のJ1デビューを飾った。常に最前線でDFと駆け引きし、相手の重心移動やわずかな隙を見つけ、空いたスペースに抜け出す。華やかな得点に目がいきがちだが、味方からのパスが来ても、来なくても何度もこの作業を繰り返すことは容易ではない。

 

ここまでJ1日本人トップの8得点の活躍

 

 藤本の地道な作業の恩恵を受けるのがFWオナイウ阿道とMF小塚和季の2人のトップ下の選手だ。藤本が最前線で相手CBと駆け引きしディフェンスラインを下げることで、トップ下の2人が自由に行き来できるスペースができる。オナイウは藤本をおとりに使って6得点決め、小塚もフリーでボールを受ける回数が増え、決定機を幾度と生み出している。

 

 「自分にパスが来なくても周りを生かせるプレーができればいい」と藤本は自分の役割を十分に理解しているが、「それでも1試合1回はチャンスが来る。それを決めるかどうかが俺の仕事。集中力が切れることなんてない」と点取り屋としての性分を隠すことはない。「ワンチャンあれば得点できる」と得点感覚を研ぎ澄ます。前回対戦した札幌戦で貴重な先制弾を打ち込んだとき、試合を終えて会場を後にするサポーターから「あの得点した人は誰なの」なんて言葉を聞いたが今は違う。前節のアウェーの横浜戦では、試合後に出待ちする横浜の少年サポーターたちから「ふじもとのりあき選手、サインください!」と大きな声でサインを求められた。J1の舞台でも注目されるストライカーとなった藤本の活躍は今後も目が離せない。

 

活躍に比例して相手のマークが厳しくなる

 

(柚野真也)