OITA SPORTS

7/1 TUE 2025

supported by

二階堂酒造

その他

3年生、夏物語 vol.6 射撃女子 シンデレラストーリーは始まったばかり 野畑美咲(由布3年)

3年生、夏物語 vol.6 射撃女子 シンデレラストーリーは始まったばかり 野畑美咲(由布3年)

 第59回全国高校ライフル射撃選手権の女子エアライフルで野畑美咲(由布3年)は準優勝したが、「正直、悔しさしかない」と笑顔はなかった。

 昨年10月の全日本選手権大会で、東京五輪出場選手を抑えて優勝したことで一気に注目を集めるようになった野畑には、「パリ五輪」がいや応なしに付きまとう。今回も「年齢制限のある高校の大会で、勝って当たり前というプレッシャーがあった」(野畑)。ただ、このプレッシャーも「次のステップに上がるための課題の一つ」と悲壮感はない。

 

 高校からライフル競技を始めた野畑は1年半で日本一に上り詰めた。身体能力は決して高くはないが、「ライフルを構える姿勢は最初からしっくりきた」と、父であり、射撃部の監督である卓宏さん。入部当初から他の新入生に比べると的中率は圧倒的に高く、ライフル競技において最も必要なメンタルの強さを持っていた。練習と同じように大会でも力を発揮できる選手は多くないが、1年の県高校新人大会では大会新でいきなり優勝し、そこから出場する大会全てで結果を出し続け、シンデレラストーリーを歩む。

 

 もちろん本人の努力があったからこそ。「最初から標的には当たる方だったが、それをセンスと言われるのが嫌だった」と全体練習後の自主練習は必ず参加し、帰宅後は体幹や筋力トレーニングに時間を割いた。師と仰ぐ日本代表コーチの磯部直樹さん(大分市役所)に教えを乞い、疑問に思ったことは何でも問い掛けた。磯部さんは簡単には解答を出さないがヒントを与える。「自分なりに考え、自分なりの答えを出す」やりとりが野畑の能力を引き出した。

 

昨年10月の全日本選手権大会で優勝した野畑美咲

 

 全日本選手権大会で優勝し、初めての国際大会となった「東アジアユース(18歳以下)エアガン大会」で4位となり、世界が広がったという。「ここぞというときの集中力、大事な場面で力を発揮できる選手になりたい。そのためには世界で戦うことを意識しなければいけないと思った」。コロナ禍で大会が中止になり、自分の力を試す場が失われても、「これも練習の一つ」と割り切ることができるのは、3年後のパリ五輪は「出場するだけではなくメダルを取りたい」と高い目標があるからだ。

 

 「ライフルに出合って人生が変わった」と野畑。今後は国際大会を経験するために国内大会で上位をキープすることが必要となる。そのために必要なことは、すでに頭の中で整理され、たどり着く道順も把握している。「あなたにとってライフルとは?」との質問に対して「使命」だと言い切る。信念の強さが野畑の最大の武器なのだ。

 

パリ五輪でメダルを目指す

 

 

(柚野真也)