大分雄城台高校ハンドボール部 酒井 幸真(2年) file.911
ハンドボール
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第49回全国高校ハンドボール選抜大会
3月24日 クラサス武道スポーツセンター
男子1回戦
大分雄城台28(16―13、12―13)26花巻北(岩手)
重苦しい立ち上がりだった。地元・大分で開幕した全国高校選抜ハンドボール大会。男子のオープニングゲームに登場した大分雄城台は、花巻北(岩手)に28―26で競り勝ち、まずは一つ前へ進んだ。だが、その勝利は決して華やかなものではなかった。揺れる展開の中で最後に踏みとどまったのは、このチームが積み重ねてきた粘り強い守備と愚直なキャプテンの存在だった。
序盤は硬さが目立った。体が動かず、相手に主導権を握られる。平井徳尚監督は試合後、「前半は絶対に競る展開になると伝えていた。初戦はどのチームも固くなるし、相手も勝ちたい思いは強い。簡単な試合にはならないという予想通りの展開だった」と振り返った。想定内とはいえ、嫌な流れだった。だが雄城台は慌てなかった。守備からリズムを整え、徐々に自分たちの強度を取り戻すと、前半終盤に逆転し、16―13で折り返した。
流れを呼び込んだ一人がキャプテンの酒井幸真(2年)だった。ポストで体を張り、途中からはセンターにポジションを移し、攻撃を整理する。視野も役割も大きく変わる難しい起用だが、酒井は「ポストとセンターでは(プレー中の)見え方が大きく変わるので難しさはあったが、しっかり切り替えてプレーできた」と淡々と振り返る。愚直で、泥臭い。その持ち味はこの日も揺るがなかった。センターでは周囲を生かし、自ら行くべき局面では強く割って出る。派手さよりも、勝つために必要な仕事を選び続けた。

後半はGK岩下琥陸(1年)の好守がチームを支えた。だが、試合は簡単には終わらない。足が止まり始め、攻撃が停滞する。平井監督が「ボール保持者しか動いていない状態になっていた」と語ったように、雄城台の良さである連動が消えた。得点が止まり、相手のパワープレーにも苦しみ、後半23分にはついに逆転を許す。
それでも酒井は下を向かなかった。「焦ったら負けだと思っていた」と言うキャプテンは、仲間に「焦るな」「下を向くな」と声をかけ続けた。感情が表情に出やすいチームだからこそ、まず心を整える必要があった。劣勢の時ほど声を掛け合えたことを平井監督も勝因に挙げた。苦しい場面でチームはようやく一つになった。残り5分を切って再逆転。最後は甲斐虹喜(1年)が連続得点を奪い、勝負を決めた。

この大会は、平井監督にとって最後の舞台となる。4月で離任する指揮官は「自分のことはどうでもいい。地元で大会ができることに感謝し、一戦一戦をしっかり戦ってほしい」と語った。自分のためではなく、あくまで選手の成長と時間を大切にしている。その思いは選手たちも理解している。だからこそ、この大会で簡単に負けるわけにはいかない。
2回戦の相手は優勝候補の浦和学院(埼玉)。平井監督は「次が本当の勝負。カギはディフェンスとバックチェック」と言い切った。最後の大会に懸ける指揮官の思いは、ここからさらに熱を帯びていく。
(柚野真也)
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