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大分トリニータ 清武弘嗣 覚悟を示す男の背中 【大分県】

大分トリニータ 清武弘嗣 覚悟を示す男の背中 【大分県】

 宮崎トレーニングキャンプ最終日、大分トリニータはザスパ群馬とのトレーニングマッチ(45分を3本)を3―3で終えた。四方田修平監督はこの試合を、相手との比較ではなく「自分たちの積み上げを確認する場」と位置づけていた。1本目には奪って速く攻める形や後方からの連動が表れたが、2本目以降は攻撃でのロストから流れを失う場面が目立った。完成度は「まだ3〜4割」。守備の連係や流れが悪い中でピッチ内の判断を修正する力が、今後の課題として浮かび上がった。

 そのピッチ内の空気を語る上で欠かせない存在が、清武弘嗣である。元日本代表、そして大分のレジェンド。だが清武は、過去の実績を語ることはない。徹底するのは、球際で戦うこと、走ることというベース。その姿勢を誰よりも体現しながら、若い選手の力みをそっとほどいていく。ギラついた空気を保ちつつ、過度な緊張は取り除く。その絶妙なバランス感覚こそ、清武がピッチに立つ意味だ。

先頭に立ってチームを引っ張る清武

 四方田監督も評価は惜しまない。「時間をつくれる、選択肢を増やせるという部分では別格。ただ、彼がいないとで機能しないチームではいけない」。個の力に依存するのではなく、誰が出ても同じ基準で試合をコントロールできる集団を目指す。その考えが、清武への起用法にも表れている。トレーニング量はあえて7〜8割に抑え、焦らせることはしない。長いシーズンを見据え、コンディションを慎重に見極めながら段階的に引き上げていく。清武の経験と影響力を最大限に生かすための、計算されたマネジメントである。

 大分在籍13年目の伊佐耕平は言う。「弘嗣くんが、歳上と歳下を自然につないでくれている。ピッチにいるだけで締まるし、若手もアドバイスをもらえる。昨年は悔しい思いをしていると思う。その分、今年は気持ちも入っている」。存在感は、言葉以上に背中が物語る。

 新加入の山口卓己も、その影響力を実感している。「サッカーをトータルで見たうまさが桁違い。ポジショニングや味方を使う感覚は本当に参考になる」。ピッチ外では誰にでも気さくで、ミスしたプレーには曖昧にせず、はっきりと伝える。その距離感が、チームを和ませ、同時に引き締める。

練習から手を抜くことはない

 小耳に挟んだ話だが、清武は木村拓哉主演のドラマ「教場」にハマっているという。白髪混じりで片目に義眼を持つ強烈なビジュアルの鬼教官だ。若さや勢いで押し切る存在ではなく、経験と覚悟を背負い、厳しさの中に一本の芯を通す。その円熟期のダンディズムに引かれているという点が、今の清武らしい。華やかなキャリアを歩んできた男が、今、最後の一花を咲かせようとする姿。その重なりがあるのかもしれない。

 若手に「プロとは何か」を背中で示し、ダメなものはダメだと伝える。その姿は、教場で木村拓哉が演じた風間公親と重なる。甘い言葉で導くのではなく、基準を突きつけ、自ら考えさせる。清武が本当に育てたいのは、脚光を浴びるスターではない。愛する大分トリニータを支え続けられるプロフェッショナルな選手だ。

 立ち返る基準は、すでにピッチの中で示されている。あとは、その基準をどれだけ日常に落とし込めるかだ。清武は、自身の立場や年齢を言い訳にしない。限られた時間の中でも、練習の一瞬一瞬に妥協せず、声とプレーで基準を示し続ける覚悟がある。自らが前線に立ち、矢面に立つことで、若手が迷わず進める道を照らす。その静かな決意と確かな責任感を宿しながら、プロ19年目のシーズンを迎えようとしている。


(柚野真也)

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