大分上野丘高校バスケットボール部 川久保 練人(2年) file.891
バスケ
第78回全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)
12月24日 東京体育館
女子2回戦
明豊52(17―11、8―16、15―10、12―26)63名古屋経済大学高蔵(愛知県)
明豊は3年連続5度目のウインターカップ。キャプテン中島綾香(3年)にとって3度目のウインターカップは、完全燃焼とはいかなかった。試合終了のブザーと同時に崩れ落ち、大粒の涙を止められずにいた。
県予選のわずか2週間前。右膝前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷という、競技人生を左右しかねない大けがを負った。「なんでこの時期に」。責任感の強いキャプテンは、自分を責めた。それでも中島は、チームの前では気丈に振る舞い続けた。不安を漂わせることだけは、絶対にしたくなかった。
将来を考えれば、手術を優先し、次のステージに備える選択肢もあった。だが中島はそれを選ばない。杉山真裕実監督、両親と何度も話し合い、チームに残る道を決めた。そこから始まったのは、誰にも見せない孤独な戦いだった。「多少痛くても我慢する。キャプテンとして、みんなを不安にさせるわけにはいかなかった」。その言葉通り、表情も態度も変えず、コートに立ち続けた。

1年生からウインターカップを経験し、シューティングガードからパワーフォワードまでこなすユーティリティー性。守備力が高く、リバウンドに飛び込み、パスで味方を生かす。中島は、得点以上の価値を持つ選手だった。下級生時代は流れを変える6番手、最上級生ではエースであり精神的支柱。杉山監督は「影武者」と表現する。「いないと本当に困る存在。平倉千春が点を取れるのも、中島がいるから。悪い流れを切る大事なカードだった」。けががなければ…、そんな思いがよぎるほど、その存在感は大きかった。
高校最後の試合、名古屋経済大学高蔵戦。膝の状態は最悪だった。踏ん張りが利かず、本来の力強さは出ない。それでも中島はコートに立ち続け、3点シュートを2本沈め、守備では相手のミスを誘った。「けがをしていても、中島なら流れを変えてくれる」。杉山監督の信頼は揺るがなかった。
ハーフタイム、治療のため一人ベンチに残った中島は、タオルで顔を覆い、静かに涙を流した。流れを持ってくるはずの自分が、それをできていない。その悔しさだった。それでも後半が始まれば、再び集中する。第3クオーター(Q)の逆転は、中島がコートにいたからこそ生まれた。安心感が仲間を支え、力を引き出した。

だが、攻撃は次第に単調になり、第4Qで再逆転を許す。残り8秒。中島が放った3点シュートは、美しい弧を描いてリングに吸い込まれた。意地の一発だった。試合後、中島は大きな声で泣いた。張り詰めていたものが、一気にあふれ出した瞬間だった。
「この舞台に立てたのは、1、2年生の支えがあったから」。そう感謝を口にし、「私たちみたいな悔しい思いをしてほしくない。もっと強いチームになってほしい」と後輩に託した。年明け、手術を受け、次のステージへ。痛みと責任を背負い続けたこの数カ月、その姿勢と覚悟は、言葉よりも雄弁に後輩たちの記憶に刻まれた。
(柚野真也)
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