冬の主役たち バレーボール女子 主将の覚悟 藤崎愛梨が挑む最後の春の高校バレー 【大分県】
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3年連続で春の高校バレーに挑む大分南。その中心に立つのが、エースでありキャプテンの井手平夏和(3年)である。大会を前にした表情は落ち着いているが、内に秘めた熱は強い。「気持ちも体もいい状態。3年間の集大成として、全てを出し切りたい」。その言葉に、覚悟がにじむ。

振り返れば、高校生活は決して平坦ではなかった。入学時は身長166センチのリベロ。そこから1年で18センチも伸びる急成長を遂げたが、体はその変化に順応できなかった。膝の痛みは慢性化し、思うように踏み切れず、着地のたびに違和感が残る。「自分の体が自分じゃないようだった」。技術も判断も頭では理解しているのに、体が追いつかない。コートに立てない時間が続き、春高の舞台で同級生の芦谷稔と宮永晃宏が躍動する姿を観客席から見つめるしかなかった。その光景は、憧れであると同時に、強烈な悔しさとして胸に刻まれた。
それでも、井手平は立ち止まらなかった。痛みを抱えながらも練習量を落とすことはなく、むしろ体と向き合う時間を増やした。トレーナーや指導者と相談しながら体の使い方を一から見直し、フォームや踏み切り、着地までを丁寧に積み重ねる。急成長が落ち着いた高校2年の夏、筋力と感覚がかみ合い始めるとプレーは明確に変わった。相手ブロックの上から叩き込むスパイクは圧巻で、助走から打点までに迷いはない。後衛に回れば鋭いバックアタックで相手の守備網を切り裂く。強打だけでなく、コートに立つだけで相手に警戒を強いる存在感。その一枚が加わることで、大分南の攻撃は選択肢と迫力を兼ね備えたものへと進化した。苦しみ抜いた時間が、そのままプレーの厚みとなって表れている。
最上級生となる頃には身長は190センチに到達し、最高到達点は3メートル35センチ。数字だけを見れば恵まれた存在だが、そこに至るまでの過程を知る者にとって、その高さは努力の積み重ねの証でもある。日本代表高校選抜の合宿にも招集され、全国レベルの選手たちと同じコートに立った経験は、井手平の意識を大きく変えた。技術やフィジカルの差以上に、勝負への向き合い方、練習への姿勢、一本に懸ける覚悟を肌で感じたという。

「同じ高校生。負ける理由はない」。その言葉は虚勢ではなく、確かな実感に裏打ちされたものだった。自信はプレーに直結し、思い切りのいいスパイクとなって表れる。勝負どころでは自然とボールが集まり、「自分に託してくれ」と言い切れる存在へと変わった。高さと決断力を備えたエースは、チームの精神的支柱としても成長を遂げている。全国の舞台で、その覚悟がどこまで通用するのか。期待は膨らむ。
最後の舞台に懸ける思いは、感謝とともにある。支えてきた家族、スタッフ、そして、小学生の頃からプレーし、今大会はマネージャーとして帯同する中村海斗への思いも口にする。「一緒に笑って終わりたい」。身長だけでなく、心も大きくなったエースが、チームを率いて全国の舞台へ挑む。
(柚野真也)
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