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大分トリニータ 来季への強化プラン 未来をつくる強度改革のシーズンへ 【大分県】

大分トリニータ 来季への強化プラン 未来をつくる強度改革のシーズンへ 【大分県】

 2年連続16位。結果だけを見れば、失意という言葉が先に立つ。しかし大分トリニータは、うつむいたままシーズンを終えたわけではない。クラブはすでに来季を見据え、次の一歩を踏み出している。

 象徴的なのが、四方田修平新監督の招聘(しょうへい)だ。J2優勝、J1昇格を複数回経験し、若手を鍛え上げてきた実績は折り紙つき。筑波大大学院で指導者としての基礎を築き、日本代表スカウティングスタッフとして1998年フランスワールドカップを支えた分析力も持つ。勝たせ方を知り、育て方も知る。今の大分に必要な資質を兼ね備えた指揮官と言える。

 もっとも、指揮官を代えればすべてが好転するほど、J2は甘くない。まず優先されるのは、チームの軸を担う選手の確保だ。GK浜田太郎、MF天笠泰輝、MF榊原彗悟、FW宇津元伸弥、FW有馬幸太郎。20代中盤に差しかかり、成長と安定を同時に期待できる存在をどう残し、どう伸ばすかが土台となる。

宇津元ら20代中盤の選手が来季の軸となる

 最大の課題は明確だ。総得点27はリーグ最下位。最多得点が有馬の5点では、どれだけ内容を積み上げても勝ち点には結びつかない。年間2桁得点を計算できるストライカーの補強は、先送りできないテーマである。

 一方で、クラブは短期的な即効性だけを追ってはいない。すでに大卒5選手の加入が決まり、将来を見据えた編成も進めている。来季からJリーグは秋春制へ移行し、2026年2月から6月にかけては昇降格のない「100年構想リーグ」が行われる。この移行期間を、単なる調整ではなく「型づくり」の時間にする構えだ。

 吉岡宗重スポーツダイレクターは、クラブの軸をぶらさない。「基準は強度」。年々フィジカルとスピードが向上するJ2で戦い抜くためには、試合以前に、日常から負荷を上げなければならないという考えだ。走行距離や球際の強さといった数値面だけでなく、連続してプレーを選択し続ける集中力、攻守が切り替わる局面で一歩を踏み出せる反応速度まで含めての強度である。その土台の上に、前へ進む推進力、ゴールに迫る迫力を重ねていく。「湧き上がるフットボール」は勢いや感情に任せた言葉ではなく、強度を積み重ねた末に自然と立ち上がる現象だ。

サポーターが望むのは勝点3

 その方向性は、すでにピッチにも表れ始めている。片野坂元監督、竹中前監督と受け継がれてきたクラブの大方針は、単なるスローガンではなく、プレーの選択として浸透しつつある。ボールを動かす際の3人目の動き、奪った直後にテンポを上げる意識。試合ごとに再現できる場面は増え、選手同士の会話の中でも「湧き上がる」という言葉が自然に交わされるようになった。完成度にはまだムラがあるが、積み上げてきたものが確かに前進しているという感触は、現場に残っている。

 昇降格のない5カ月間は、結果に縛られずチームの土台を固めるための期間となる。ミスを前提にチャレンジを重ね、戦い方と選手の適性を見極める。その方針は、補強や準備の進め方にも明確に表れている。勝ち点を追うだけのシーズンを経て、大分は次の段階へ進む。来季は立て直しではなく、チームを一段引き上げるためのシーズンとなるはずだ。

(柚野真也)

大会結果