バサジィ大分 頭脳で導く若き司令塔・陣川凌 後半戦への覚悟 【大分県】
フットサル
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リーグ再開後の3連敗。順位は9位、最下位との差はわずか2。バサジィ大分は今、危機的状況に立たされている。数字が示す通り、リーグワーストの得点数がチームを苦しめている。しかし、その中でひときわ強い視線をピッチに向ける男がいる。今季名古屋から加入したオールラウンダーの鬼塚祥慶だ。
新加入選手が多い今季、大分はチームとしてのかみ合わせに時間を要した。戦術理解、コンビネーション、攻撃のリズム。どれもが昨季から大きく変化したことで、ピッチ上の呼吸が揃わないまま試合が続いてしまった印象がある。鬼塚も「思っていた順位には届いていない」と現状を率直に語るが、そこには単なる不満ではなく、改善への強い焦りと責任感がにじむ。
鬼塚がまず口にしたのが「シュート本数を増やすこと」だった。数字として表れた決定力不足は、単なる技術の問題ではなく、ゴールへ向かう意欲の総量が足りていないことの裏返しだと鬼塚は見る。スペースがあれば打つ、迷ったら振り抜く。フットサルにおける最もシンプルで力強い原則が、今の大分には浸透しきれていない。

だからこそ、鬼塚は自らその矢印を示し続ける。「まず自分が打たなければいけない」。その危機感を、誰よりも強く、誰よりも具体的に抱いている。鬼塚の言葉は、単なる提案ではなく実行力を伴ったチームへのメッセージそのものだ。
前線でも後方でも役割を担える可変性は鬼塚の大きな武器だ。ボールを受ければ迷いなく仕掛け、後方に下がれば味方にシュートを打てるパスを供給する。プレーに迷いがないのは、常に目的地をひとつに定めているからだ。それは「ゴール」だ。どの位置にいても、最終的に得点へと向かう道筋を描く。その意識こそ、今の大分に最も欠けているものだと言える。
また、チームの生命線ともいえるセットプレーでも鬼塚は中心的存在である。アイコンタクトで呼吸を合わせ、走り出す選手の動きに合わせてボールを送り込む。思惑が1ミリずれれば崩れてしまう世界で、精度の高さが勝敗を左右する。「勝っている試合は、セットプレーで点を取れている」。その事実を誰よりも理解している鬼塚は、クオリティー向上に強い決意をにじませる。

昨年まで在籍していた名古屋と比べ「プレー基準や選手層の部分では足りない」と感じる部分はある。しかし、だからこそ伸びしろは大きい。鬼塚の言葉には悲観よりも前進の熱がある。残りリーグ戦に向けて必要なことを問えば、迷わずこう言った。「もっと貪欲に、もっと強い気持ちでゴールを奪いにいく。勝ちたい気持ちを前面に出す」
大分の得点力不足を変えるのは、システムでも戦術でもない。一つのアクション、その積み重ねだ。そして今、鬼塚の持つ「揺るがない矢印」こそが、チームを再び上昇気流へ乗せる原動力となるはずだ。
(柚野真也)
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