OITA SPORTS

11/20 THU 2025

supported by

ダイプロ

サッカー サッカー

NEW!

大分トリニータ 伊佐耕平 前線の魂が走る 残留へ導く覚悟 【大分県】

大分トリニータ 伊佐耕平 前線の魂が走る 残留へ導く覚悟 【大分県】

 リーグ戦は残り2試合。直近2試合で連敗を喫した大分トリニータは、依然としてJ2残留を確定できず、重たいプレッシャーを抱えたまま終盤戦を迎えている。そんな状況で、ひときわ静かに、しかし、強い意志を秘めて立つ男がいる。チーム在籍12年目、前線守備の象徴となる伊佐耕平である。

 伊佐の今季を一言で表すなら「紙一重」。攻撃の兆しをつかんでは勝利を逃し、守備の粘りが効いた試合でも最後の精度が足りない。勝てそうで勝ち切れない試合の反復は、ピッチに立つ選手ほど深く心に残るものだろう。伊佐はその現実から目をそらさず、「良くなりかけては結果がついてこない。その繰り返し」と率直に語る。

練習から常に100%を出し切る伊佐

 しかし、このFWには言い訳がない。むしろ、勝てなかった理由を自分の中に引き受ける強さがある。「(決定機で)決めていれば…」という場面は数え切れない。だが伊佐は、そこに至るまでの細部こそが結果を左右したと考えている。日々の練習からの判断に精度、強度、守備の一歩目。プロ12年目の結論は、積み重ねの差が勝敗を決めるという極めてシンプルで、しかし逃げ場のない真理だった。

 今季、伊佐はほとんどけがなくここまで戦えたことが大きい。前線からのチェイシング、走り直し、守備のスイッチ。得点こそ遠いものの、ハードワークの量と質は衰え知らずだ。伊佐が相手CBに与える圧、こぼれ球を生む守備、味方の守備ラインを押し上げる強度は、数字では測れない価値そのものだ。

 今季途中に監督交代もあった。新体制の下、攻撃面ではより明確な意図が共有され、迷いのないプレーができるようになったと伊佐は感じている。それでも強調するのは「判断と修正力」の不足。技術よりも、流れを読む力こそ今のチームが鍛えるべき部分だ。

ホーム最終戦でJ2残留を決める

 残り2試合は千葉、水戸という上位勢が相手だが、伊佐は静かに前を向く。「勝つ可能性は十分ある。自分たちのサッカーで勝ちにいくだけ」。膝の不安と戦いながらも、最後まで走り切る姿勢を崩さない。

 終盤戦には、同世代の三竿雄斗と岡本拓也が加入し、チームの空気も変わった。若手中心のロッカーに経験値が加わり、声の強度も増した。伊佐自身も彼らの存在に刺激を受けている。

 紙一重で勝ち点を逃し続けた一年。その悔しさを抱えたまま、伊佐はホーム最終戦へ向かう。淡々と、確かな覚悟をにじませながら。12年目のFWが最後に示すのは、派手なゴールではなく、チームを生かすための献身的なプレーである。


(柚野真也)

大会結果