OITA SPORTS

11/14 FRI 2025

supported by

ザイナス

バレー バレー

NEW!

グッドルーザー バレーボール女子 大分商業 キャプテンの最後の声 笑顔で終えたラストゲーム 【大分県】

グッドルーザー バレーボール女子 大分商業 キャプテンの最後の声 笑顔で終えたラストゲーム 【大分県】

勝者がいれば、必ず敗者がいる。だが、涙の数だけ強くなれるのもまた真実だ。悔しさを胸に後輩へ、次の自分へとバトンを渡す。勝利だけでは語れない青春が、そこにある。敗者という名の強者たち。“グットルーザー”の言葉に耳を傾ける。

第78回全日本バレーボール高校選手権県代表決定戦
11月2日 クラサス武道スポーツセンター
女子決勝
大分商業0(16ー25、15ー25、19ー25)3東九州龍谷

 春の高校バレー県代表決定戦・女子決勝。12年連続で東九州龍谷(東龍)と対峙した大分商業は、ストレートで敗れ、悲願の初優勝は来年へと持ち越しとなった。

 今年の大分商業は、例年以上に実力ある選手がそろい、「勝てるかもしれない」と期待が高まっていた。特に攻撃力は秀逸。森栄一郎監督が「歴代で一番」と評する絶対エース安藤美空、技術と柔軟さを兼ね備えたサウスポー帆秋杏、力強いスパイクが持ち味の小田原明日香の2年生トリオを軸に、若いチームながら確かな実績を積み重ねてきた。

 中軸は下級生だが、チームの飛躍を支えたのは間違いなく唯一の3年生・平田咲凪だった。後輩を鼓舞し、ときに叱咤(しった)しながら、個性豊かなメンバーが同じ方向を向けるようにまとめ上げてきた。孤軍奮闘の時間は、やがて学年を超えた強い絆を生み、「全員で勝利をつかみたい」という思いがチーム全体に広がっていった。

唯一の3年生としてチームを引っ張った平田

 「キャプテンを全国へ」その思いを胸に迎えた決勝戦。序盤から東龍に主導権を握られたものの、練習の成果は随所に表れた。東龍のエースのスパイクを何度も止め、サーブで崩す作戦もはまった。ただ、東龍は一枚も二枚も上手だった。サイドからも鋭いスパイクが次々と打ち込まれ、立て直す前に追撃を受ける。攻撃は高いブロックに阻まれ、ミスから連取を許す展開が続く。1、2セット目は大きな見せ場を作れないまま終わった。

 3セット目の前、平田はこう声をかけたという。「最後まで笑顔でやろう。楽しもうよ」。

 その言葉で力みが抜けた。「そうだ、キャプテンとやれるのは最後だ」。そこから空気が変わった。笑顔が弾け、“商業らしさ”が戻ってきた。勝利こそ逃したが、20点台に迫る接戦を演じ、平田のラストゲームにふさわしい意地を見せた。

 試合後、平田は「みんなとコートに立てて、うれしかった。憧れだった春高の舞台は後輩に託す。1、2年生は伸びしろのある選手ばかり。自信を持って、下を向かず、笑顔で頑張ってほしい」と後輩にエールを送った。涙を浮かべながらも、その表情にはやり切った充実感がにじんでいた。

 もちろん、その思いは後輩にしっかり届いている。安藤は「キャプテンにはたくさん迷惑をかけた分、恩返しをしたかった。来年は大事な場面で点を取れるエースになって勝利に貢献したい」、帆秋は「力が出し切れなかった。支えてくれたキャプテンに申し訳ない。今日の悔しさを忘れず、来年はいい報告をしたい」、小田原は「試合後、キャプテンは一番悔しいはずなのに、何も気にせんでいいよ、頑張ったよといたわってくれた。その思いを胸に練習に励み、来年は優勝する姿を見せたい」と決意を新たにした。

キャプテンの思いを託され新チームが始動する

 最後に「チームを支え、まとめてくれた平田には感謝しかない。来年もメンバーはほとんど同じ。今日の経験を糧に、どう成長できるか。それが飛躍のカギになる」と語った森監督。そのまなざしはすでに次の舞台を見据えていた。
 来年は主力の2年生トリオが最上級生としてチームを引っ張る。平田の思いを胸に、どんな試合を見せてくれるのか。期待が高まる。


(甲斐理恵)