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グッドルーザー バレーボール男子 大分工業 惜敗の先に3年生が残した熱 【大分県】

グッドルーザー バレーボール男子 大分工業 惜敗の先に3年生が残した熱 【大分県】

勝者がいれば、必ず敗者がいる。だが、涙の数だけ強くなれるのもまた真実だ。悔しさを胸に後輩へ、次の自分へとバトンを渡す。勝利だけでは語れない青春が、そこにある。敗者という名の強者たち。“グッドルーザー”の言葉に耳を傾ける。

第78回全日本バレーボール高校選手権(春の高校バレー)県代表決定戦
11月2日 クラサス武道スポーツセンター
男子決勝
大分工業2(25ー22、25ー21、21ー25、22ー25、12ー15)3大分南

 春の高校バレー県代表決定戦の男子決勝。大分工業はフルセットの末に大分南に敗れ、静かにコートを去った。あと一歩で勝利に手が届いていただけに、悔しさの残る結果となった。

 今年のチームは、大エースがいるわけでも、飛び抜けた武器があるわけでもない。江崎裕之監督は「真面目さ、素直さというチームカラーは変わらないが、今一歩、熱量や思いが足りない」と厳しく評価。特に3年生にはげきを飛ばすことも多く、大会直前の取材では「今のままでは絶対に勝てない」と断言していた。下馬評でも高さとパワーに勝る大分南が優勢。一方的な展開になるのでは―そんな空気が漂っていた。

 しかし、ふたを開ければ、両者一歩も譲らぬ激闘となった。最初に流れをつかんだのは大分工業。攻撃面では県内屈指の技巧派である和間志苑(3年)や、圧倒的パワーで相手をねじ伏せるエースの今村望夢(2年)が躍動。1年生のポイントゲッター井野本勇斗、行村隆之介ものびのびとプレーし、得点を重ねた。相手のミスに助けられた部分もあったが、サーブレシーブも安定し、持ち味である粘り強さを存分に発揮した申し分のない内容だった。2セットを先取し、全国への切符に王手をかけた。

力強いスパイクを決めた今村

 しかし、3セット目に入ると潮目が変わる。大分南が策を講じ、練習通りが通じない場面が増えた。気持ちが焦り、ミスも続いた。「どうにかしなければ」そう思っても選手層の薄さゆえ、対応し切れない。1点を取り合う攻防の中で同点に追い付いては離され、前に出ることができない。江崎監督やキャプテンの山口蓮太(3年)の前向きな声掛けも状況の打開には至らず、3、4、5セットを連取され、逆転負け。

 試合後、「相手の方が技術が上だった」と言葉少なに語った江崎監督。今はまだ何も考えられないとしながらも「3年生は出場していない子も多い。それでも朝早くから練習に励み、頑張ってくれた。チームを支えたのは間違いなく3年生」と最後まで走り抜けた3年生への感謝を述べた。

 大会直前、江崎監督が「絶対に勝てない」と言ったチームが地力で勝る大分南に一歩も引けを取らない戦いぶりを見せたのは3年生の気持ちの変化が大きい。江崎監督の厳しい言葉、3年間の思い、後輩への責任。全てを受け止め、話し合いを重ね「みんなで東京に行こう」と誓った。絶対に負けたくない。そんな思いが気持ちに火をつけた。

 勝つことはできなかったがフルセットの死闘を戦い抜いたことはチームにとって大きな意味を持つ。3年生が残したのもチームの未来を思う言葉だった。

下級生へ思いを託した山口

 山口は「この1年間、3年生はずっと怒られてきた。自分も一度メンバーから外され、悔しい思いをした。その中で頑張ってきたが、気づくのが遅かった。大分南の主力は3年生が多い。来年は高さの面でも五分になる。どう戦っていくかしっかり考えてほしい」、和間は「このチームだからこそ成長できた。新チームはいいメンバーが揃っているので九州や全国でも上を目指せると思う。自分たちが叶えられなかった夢を叶えてほしい」とそれぞれの思いを後輩へ託した。

 そんな3年生の思いを後輩もしっかり受け取っている。今村は「終盤になるにつれてスタミナが切れてジャンプ力が下がった。3セット目も自分が決め切れていれば勝てたと思う。悔しいし、申し訳ない。でも3年生が調子が上がり切れていない自分にトスを託してくれたり、行けるぞと声を掛け続けてくれり…。試合後もよくやったと労ってくれた。本当に感謝している。来年は先輩にいい報告がしたい」と飛躍を誓った。


(甲斐理恵)