グッドルーザー バスケットボール男子 誇りの敗戦 大分上野丘が刻んだ証明 【大分県】
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第78回全国高校バスケットボール選手権(ウインターカップ)大分県予選
11月3日 クラサス武道スポーツセンター
男子決勝
柳ケ浦70(14―14、22―15、19―11、15―25)65別府溝部学園
ウインターカップ県予選の男子決勝は、柳ケ浦が70―65で別府溝部学園を振り切り、2年連続5回目の出場を決めた。序盤から互いの意地がぶつかり合い、最後まで一瞬たりとも目が離せない攻防となった。会場を埋めた観客の声援が渦を巻く中、試合を決定づけたのは司令塔の古謝脩斗(3年)が放った3点シュートがリングに吸い込まれた瞬間、ベンチも応援席も歓喜に包まれた。激闘の末に手にした全国切符。その裏には、ある「約束」があった。
創部以来チームを率いてきた中村誠監督が、決勝2週間前に入院。指揮官不在という異例の事態に、選手たちは動揺を隠せなかった。それでもキャプテン田場瑶大(3年)を中心に「監督を全国に連れて行こう」と心を一つにした。代行を務めた北野琳斗アシスタントコーチのもと、チームは練習から守備意識を徹底し、「誰が出ても崩れないバスケ」を共有。中村監督の思いを背負い、全員が自らを鼓舞するようにコートへ立った。
序盤は互いに固さが見られ、第1クオーター(Q)は14―14。だが、柳ケ浦は2Qから相手エースを徹底的にマークし、攻撃力を封じる。留学生ファデラ・ママドゥ(2年)を軸に得点を重ね、3Qを終えて55―40と15点差をつけた。ロースコアゲームは、守備から流れをつくる柳ケ浦の得意な展開だった。

しかし、勝利の女神は簡単には微笑まない。終盤にファウルトラブルが重なり、ママドゥが退場。じわじわと点差を詰められ、残り63秒で2点差に迫られた。会場が緊張に包まれる中、ボールを託されたのはポイントガードの古謝。攻撃は1回につき24秒以内にシュートを打たなければならない、いわゆる「24秒ルール」がある。古謝はその時間をギリギリまで使い、試合の主導権を手放さなかった。そして残り45秒、迷いなく放った3点シュートがリングを射抜き、勝負を決めた。
「入った瞬間、鳥肌が立った。あれは覚悟のシュートだった」。古謝は試合後、笑顔で振り返った。その“覚悟”とは、チームを背負う3年生としての責任だった。中村監督のいない決勝で、最後にボールを託された自分が決めなければ終わる。その覚悟が迷いを消した。焦りを見せずにゲームを支配し続けた姿は、まさに3年生の意地そのものだった。
北野監督代行も「焦りはなかった。3年生を信じていた。どんな状況でも崩れないチームをつくってきた」と胸を張る。中村監督の不在を感じさせない結束力が、最後のブザーまでチームを支えた。キャプテン田場は「監督に優勝を報告できるのがうれしい」と言葉を詰まらせた。
創部から中村監督が築いたチームの形を、この日、選手たち自身が体現してみせた。監督への思いを胸に、仲間のために戦う強さこそが柳ケ浦を全国の舞台へと押し上げた。

(柚野真也)
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